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第904話

起きてから城崎に何度も水を飲まされて、何度もトイレに行った。 膀胱炎の予防らしい。 異物を尿道に入れたから、おしっこで中を洗い流すとかなんとか…。 じゃあやらなきゃいいじゃんと思ったけど、口にはしなかった。 だって、城崎めちゃくちゃご機嫌だし、起きてからずっと甘やかしてくれるし、今機嫌損ねるようなこと言いたくない。 「綾人さんっ♪今日は冷やし中華です♪」 「おー、美味そう。」 「たっぷり召し上がってくださいっ♡」 腹がいっぱいになるまで堪能し、そのあとお腹が落ち着いた頃に、心頭滅却のため二人でジョギングに行った。 途中の公園で、一度休憩する。 ベンチに座ると、城崎が俺の肩に頭を置いた。 「今日の綾人さんも最高でした…♡」 「俺は乳首も痛ぇし、ちんこもちょっと痛ぇよ。」 「快感の代償ですね♡でも明日の夜は俺がとびっきり気持ちよくしてあげますからっ♡♡」 「次の日も仕事なんだから、加減しろよ?」 「分かってますよ♡」 俺とのセックスを待ち侘びている彼氏が可愛過ぎる件について。 俺も楽しみなんだけど、こんなにも楽しみにされたらさすがに嬉しい。 俺のこと求めてくれてるって分かるから…。 「帰ったらシャワー一緒に入る…?」 「ぐっ……。めちゃくちゃ魅力的なお誘いですけど、多分俺、綾人さんに擦り付けちゃうから遠慮しときます…。」 擦り付けるって……。 想像しただけで顔が熱くなって、ベンチから立ち上がった。 「帰る!」 「もっとゆっくりしていきましょうよ〜。」 駄々をこねる城崎を置いて帰ると、すぐに追いついてきた。 足長い自慢かよ…! と内心怒りながら、でも城崎のスタイルの良さも好きだから、何も言えずに口籠もる。 「あーあ。透さんの悪口なんか言うんじゃなかったなぁ。」 「そうだよ。元はと言えば城崎のせいじゃん。」 「突然近くに来てるのは反則じゃない?」 「陰口はダメって神様からのお告げじゃないか?」 あのとき、倉科さんの姿が視界に入った時点で、俺も城崎の口を塞ぐなりなんなりしておけばよかったと後悔する。 まさか一週間のセックス禁止がこんなにも辛いなんて。 離れていた時はそうでもなかったけど、そばに居てお互い求め合ってる時のこれはキツい。 「キスを許してくれただけマシなんですかね…。」 「キスも禁止だったら、一週間でも出ていかなきゃ無理だ。」 「たしかに。」 そばに居たら自然とキスしてる。 磁石みたいに引き寄せられて、いつの間にか唇が重なってる。 俺が城崎以外と歩む将来なんて、全く想像がつかない。 「そういえば、夏祭りでとった温泉旅行いつ行きます?来月にする?」 「うん。それでいいよ。」 「綾人さんの誕生日に500円の温泉は嫌だから、そこ以外ね。早めがいい?でも3日は受診日だから、10日から一泊二日にする?」 500円の温泉…(笑) 内容はスイートルームっぽいから、全然安くないんだけど…。 城崎が俺の誕生日を特別に思ってくれてるのは嬉しいな…。 「10日でいいよ。」 「了解です!じゃあさっそく明日申請しないと。」 「俺もしとく。」 「はいっ!」 喋りながら走っていたから、普通の倍は疲弊して家に辿り着いた。 帰ってスケジュール帳に『温泉旅行』と書いておく。 家のカレンダーにも書こうとすると、城崎が既に『♡♡温泉旅行♡♡』と書いていて、その下にはハートいっぱいに『綾人さんの誕生日』と書かれていて、嬉しくて思わず笑ってしまった。

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