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第906話
午後から城崎は外回りに行ってしまった。
昼休みが終わる直前、会議室で濃厚なキスをされてから、なんだか気持ちがソワソワする。
一週間ぶり…。
昨日のことを思い出して、体が熱くなる。
今夜はいっぱい城崎に甘えてもいいんだ…。
「はぁ…。早く夜になんねぇかな…。」
「主任♡どうされたんですか?そんな物憂げなため息ついて♡」
「げっ…」
背後から現れたアイツにげんなりする。
そうだ。午後は蛇目と資料整理だった…。
「何でもない。」
「そんなことないでしょう?そんな熱い息吐いちゃって♡もしかしてセックスレスです?私でよかったらお手伝いしますよ♡」
「死んでもお断りだよ。」
「酷い…。一夜を共にした仲なのに…。」
「誤解招くようなこと言うな。」
もう…。
城崎いたら、すぐに助けてくれるのに…。
そうだよ。セックスレスだよ。
そんでもって、今夜それが解消されるんだよ。
心の中でそう言って、口には出さなかった。
そんなことこいつに教えた日には、面倒なことになるに決まってる。
「綾人〜、ちょっと来て。」
「涼真!」
「蛇目、綾人借りるよ。」
「残念。城崎くんは念入りですね。」
何で城崎??
と思ったけど、涼真は苦笑している。
「何?」
「いや、何も。綾人が蛇目にちょっかい掛けられてたら助け舟出してって頼まれてただけ。」
「城崎に?」
「うん。そんで今俺が綾人を呼んだのも、城崎の差し金だって蛇目にバレバレだったなーって。」
「なるほど。」
さっきの蛇目の言葉に合点がいった。
心配してくれてたんだ…。
嬉しい。
私用のスマホがバイブで通知を知らせ、内容を確認すると城崎からだった。
『資料整理なんて二人でしなくていいですからね!!』
ふふ…。
あー、好きだなぁ…。
「涼真が助けてくれたよ、二人きりにならないように気をつける…と。」
「ラブラブだな。」
「わっ!?見るなよ!」
「いや、声に出てっから。」
「?!」
涼真に惚気が口に出ていたことを指摘され、慌てて口を塞ぐ。
俺、最近緩みすぎだよな…。
人のこと言ってる場合じゃねぇや。
「なー、涼真…。」
「何?」
「俺めちゃくちゃ城崎のこと好きみたい…。」
「見てりゃ分かるっつーの。てか、おまえがあいつのこと好きじゃなかったら応援してねぇし。すぐ別れろって言うよ。」
「あ〜………、会いたい……。」
「さっきまで一緒に弁当食ってたじゃん。」
涼真は呆れたように笑っていたけど、だって俺は昨日中途半端に焦らされて…。
いや、俺はイッたから中途半端なのは城崎の方?
でも俺だって独りよがりじゃ満足なんてできてないわけで…。
「あ〜〜〜………」
「何?マジで蛇目の言ってたこと図星?」
「早く帰りたい……。」
「はは…。ガンバレ〜。」
涼真は俺の肩をぽんぽんと叩き、珈琲置いて姿を消してしまった。
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