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第907話
外回りから帰ってきた城崎を見て、すぐに駆け寄ると、城崎は人目を気にしながら物陰でひっそりと抱きしめてくれた。
定時に仕事を終え、タイムカードを切る。
家に帰ってシャワーで汗を流した。
「お腹空いたし、もう行きますか?」
「まだ全然早いけど…。」
「Aquaだし長居させてくれるでしょ。」
「飲んでいい?」
「ダメ。綾人さんはノンアル。」
麗子ママの絶品おつまみを前にアルコール禁止か…。
城崎のケチ…。
城崎の分、勝手に数口貰っちゃお。
20時にはAquaに着いて、カランコロン…と扉を開けて中に入ると、大きな影が飛びかかってきた。
「綾ちゃーん!いらっしゃぁい♡」
「れ、麗子ママ…っ!苦しい…」
「あらぁ♡ごめんなさいね♡」
麗子ママの熱烈なハグを受けて、席へ案内される。
店は任せていていいのか、麗子ママは一緒に席に座った。
「最近どうなのぉ〜?」
「綾人さんのご実家に挨拶に行きました。」
「まぁまぁまぁっ♡ちょっとぉ!詳しく聞かせなさいっ!」
名前呼びに変わったこととか、実家に挨拶に行ったとか、少し顔出してない間に、俺と城崎の関係は結構進展したのかも。
俺は恥ずかしくて聞いてるだけだったけど、城崎は嬉しそうに麗子ママに惚気ていた。
あっという間に2時間が経ち、倉科さんと圭くんが来た。
「よぉ。待たせたな。」
「遅いですよ!!早く帰りたい!!」
「んな急かすなよ。ゆっくり飲ませろ。」
「もっちーさん、夏月くん、一週間ぶり〜!」
一緒の卓に着き、それぞれ思うままに飲んだり食べたりする。
城崎がトイレに行ってる間に、城崎のお酒を飲み切った俺は、数分後には程よく出来上がっていた。
「げっ…。誰が飲ませたんですか…。」
「城崎ぃ…。抱っこ……。」
「綾ちゃんかーわーいーいー!♡」
両手を広げると、城崎は困ったように頭を掻き、俺を優しく抱きしめてくれた。
大好きな人に抱きしめられながら、ウトウトと夢の世界へ旅立とうとしていると、ぐにぃっと鼻を摘まれる。
「何すんだよぉ…」
「寝ちゃダメ。だから飲ませたくなかったのに。」
「んん〜……」
城崎の胸にグリグリ頭を擦り付けていると、ニヤニヤした顔で倉科さんが隣に座る。
「望月さん、質問していいですか?」
「……なんですかぁ?」
「夏月とどこまでシた?正直に。」
「なっ…?!こんな綾人さんに聞くなんて卑怯ですよ!!」
「約束守ってんなら焦る必要なんてねぇだろ?」
城崎は少し怒ってて、倉科さんは何だか楽しそう…。
夏月と…、どこまで……。
「キスしたぁ…。いっぱい…。」
「ん。それで?」
「ギュってされて、一緒に添い寝した…?」
「へぇ。他には?」
「あーあーあー!もう聞かなくていいって!!」
城崎に口を塞がれる。
昨日のことを思い出して、恥ずかしさと虚しさが込み上げてくる。
「俺が気持ちよくなってるとこ、夏月に見られたぁ…。」
「ん?夏月は?触ってねぇの?」
「触ってくんなかったぁ…、グスッ…」
酔いが回って涙腺も崩壊。
昨日城崎がシてくれなかったことを思い出して涙が溢れた。
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