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第908話

「自慰行為させて見るだけで手ぇ出さねーなんてサイテー。」 「夏月くん酷い…。」 「何で俺っ?!悪いのって透さんですよねっ?!!」 俺が泣き始めたから、城崎はおろおろしながらも俺を撫でたり抱きしめてくれた。 人前で泣くとか嫌なのに…。 しかも理由が理由。 心を許しているからなのか、単に俺の酒の弱さが招いたことなのか。 「城崎ぃ…。」 「泣かないで…。俺、綾人さんが泣いてると不安になるよ。」 「止まんないぃ…」 「あれだけ飲むなって言ったのに、俺が帰ってくるまでにってお酒一気飲みしたでしょ…。よりにもよって度数高いお酒だし…。」 「うっ…、ヒック……」 「後で勃たないとか言って泣かないでくださいね。」 優しすぎる恋人。 その優しさに甘えてしまって、約束すら守れない男になってる最低な俺。 自分の情けなさにまた涙を溢れさせると、城崎は俺を抱きしめて立ち上がった。 「透さん、圭さん、そろそろお暇します。」 「もうそんな時間か?」 「はい。あと20分で日付超えるんで。」 「はいはい。楽しんで。程々にな。」 「麗子ママも長居してごめん。また来るよ。」 「待ってるわね〜♡」 23時40分。 スマホの画面に映った時刻。 城崎は俺を背に乗せて、ホテルへ向かった。 そっかぁ…。 やっと抱かれるんだ…、俺…。 「夏月…」 「ちょっ…?!まだホテル着いてないんですけど!」 「好き…、大好き……」 「わーわーわー!?それ今聞いたら歩けなくなるからやめて!?」 首筋にキスしながら気持ちを伝えていると、城崎は歩みを早めた。 ホテルに入って一旦背中から下ろされる。 城崎が機械でチェックインして、エレベーターに乗り込んだ。 「んっ、ん…」 「綾人さん、部屋入るまで我慢…、ね…?」 「は…やく…っ」 「ずっとお預けでしたもんね。今日はいっぱいシようね?」 キスも待ったを喰らい、溢れ出しそうな欲望をどこに散らせばいいか分からなくなる。 チンッとエレベーターがフロアに着いた音を鳴らし、部屋まで直行して急いで鍵を開けた。 「はっぁ、んっ…」 「綾人さ…、綾人さん…っ」 部屋に入るなり壁に押し付けられ、お互いの唇を貪り合う。 俺の腕を壁に押さえつける城崎の力が、余裕のなさを表してるみたいでドキドキする。 「もぉ…いいのか…?」 「律儀に約束守るなら2分ありますけど…。もういいよね?」 「あっ♡ん…っ♡…ベッドがいぃ…っ」 「分かった。」 ベッドに優しく下ろされ、城崎は俺の上に跨りながら服を脱いでいく。 格好良い……。 「綾人さん、脱がしてもいい?」 「う…ん…」 城崎は慣れた手つきで俺の服を脱がせていく。 素肌のまま抱きしめ合ったのは、丁度0時を迎えた瞬間だった。

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