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第917話
翌日、俺は朝から夏月と電話した。
やっぱり昨日のことで遅発性に何か起こったりしたら怖かったから。
夏月は元気そうで、午前中に検査一式終わらせて、午後から警察の事情聴取を受けて、夕方には帰ってくる予定らしい。
今すぐにでも病院に行きたいのに、俺は出勤しないといけない…。
「おはようございます…」
「暗っ!何かあったのか?」
職場に着いて、俺の顔色を見てびっくりしていたのは涼真だった。
休憩室で話を聞いてもらうと、涼真も驚いていた。
「そりゃ心配だよな…。でも大したことなくてよかったな。」
「うん…。」
「今日早上がりさせてもらったら?」
「でも昨日休んだし…。仕事溜まってるから…。」
「俺も手伝うよ。」
「ありがと。でも大丈夫。ちゃんとやり切って帰るよ。」
涼真の気持ちはとても嬉しい。
本当は今すぐにでも帰りたいけど…。
でも俺、夏月と付き合い始めてから有休や時間休も結構使ってるしな…。
夏月のいない職場はなんだかとても寂しくて、でも時間は当たり前のように進んでいった。
積み重なった書類を捌くのに集中していたら、いつの間にか昼休みの時間になっていて、俺はすぐに夏月に電話をかける。
「もしもし…?夏月?検査どうだった…?大丈夫なのか?」
『綾人さん、落ち着いて。大丈夫ですよ。脳も異常なし。骨折とかもなかったです。』
「よかった…。はぁ…。めちゃくちゃ心配した…。」
『今荷物まとめてて、もうすぐ退院です。早く家帰って、綾人さんの手料理食べたいな〜。』
「マジで腹壊すなよ?」
『はいっ♡』
昼休みが終わるギリギリまで話して、電話を切った。
何も異常がなくて本当に良かった。
でも、もし夏月が俺に心配かけないように嘘ついてたりしたら…?
あり得るよな…。
俺が見てわかるかどうかは置いといて、帰って検査結果見せてもらおう。
「綾人、飯食ったか?」
「あ。忘れてた。」
「城崎が心配なのも分かるけど、自分が倒れちゃ元も子もないぞ。ちゃんと食ってこい。」
「悪い。」
コンビニに降りて、ウィダーゼリーと一口タイプのサンドイッチを買って戻り、食べながら仕事に励んだ。
今日は絶対に定時で切り上げて、帰って夏月の無事を確認するんだ。
涼真が俺に声をかけてくれたのを見て、ちゅんちゅんも手伝ってくれた。
事情も知らないのに手伝ってくれるなんて、優しい部下を持って良かったと思う。
そんな二人を見てか、唐突に蛇目も現れて、さらっと俺の仕事をもらっていってしまった。
三人のおかげで今日のノルマは余裕で定時に間に合った。
「本っ当にありがとう。恩に着るよ。」
「もう帰る準備して、定時になったらすぐ行けよ。」
「うん。」
「城崎くんが主任を置いて休むなんて、相当なことがあったんでしょう?不安気な主任の表情も素敵ですけど、笑顔が一番素敵なので。悔しいですけど、早く安心してきてくださいね。」
「ありがとう。」
話してなくてもすぐに察してしまう蛇目の観察眼は怖いけど、俺と夏月の関係を知っているからこういうときに頼りやすい。
頼ったのを知ったら、夏月が怒りそうな気もするけど…。
兎に角、今日は早く帰りたかったから助かった。
定時になってタイムカードを切って、急いで家に帰った。
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