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第931話
温泉旅行が終わってからは、慌ただしい一週間だった。
週明け早々に蛙石が出先でやらかしてしまったらしく、それをフォローするのに大変だった。
一緒に出向いていた上司が席を外している時に、自己アピールをすべく頑張った結果らしい。
蛙石はやらかした直後二日ほど体調を崩して休んだ。
トラブルは解決したものの、蛙石のメンタルフォローがなかなか大変で……。
「そろそろ元気出せって!ミスくらい誰にでもあるし!」
「そうだぞ、ケロ太!俺なんてしょっちゅう柳津さんとか望月さんに怒られてるし!」
「ちゅんちゅん、自慢げに言ってるけどダメだからな、それ…。」
復帰してからもそれはそれは元気がなくて、こうして金曜の晩に飲み会を開いているわけだ。
励まされると余計に辛いのか、蛙石はグスグス泣いていた。
「これ、いつ帰れるんですかね…。」
「こら。少しは励まそうとする素振りくらい見せろよ。先輩だろ?」
「月曜から毎日残業して、やっと解決して明日は休み。早く帰って綾人さんに甘えたかったのに、こんな予定外の飲み会…。」
夏月は興味なさそうに隅の方で不貞腐れていた。
俺だって夏月と家でゆっくりしたいけど…。
でも蛙石だって大切な部下なわけで、放っておくことなんてできない。
「尊敬してるおまえが励ましてやれば、元気出るかもよ?」
「あいつが元気取り戻したら帰ってもいいのかな?」
「いいんじゃね?」
「わかりました。いってきます。」
さっきまで乗り気じゃなかったくせに、帰れる条件がわかった瞬間にやる気を出した。
蛙石を慰める同僚を押し除けて、夏月は蛙石の隣に座る。
「ミスくらいあるだろ。」
「城崎さん…。」
「今後しなかったら大丈夫だから。むしろ今回で気付けただろ?お前はまだ半人前だし。だから俺たち先輩が同行してるんだよ。一人で抱え込むな。」
「僕、城崎さんみたいな凄腕営業マンになれますかね…。」
「なれんじゃね?頑張れば。」
「………はいっ!!頑張ります!!」
蛙石の目にキラキラと命が戻った。
えぇ…。あんなにみんな励ましてたのに、夏月のそれだけで解決すんだ…?
夏月は俺の方に戻ってきて、俺の腕を引っ張って立たせる。
「じゃ。お先に失礼します。」
「ありがとうございましたっ!!」
「お、お疲れ様〜……。」
夏月に連れられて帰る俺。
またみんなにヒソヒソ噂されてるんですけど…。
「俺と綾人さんの噂、また広がってますね♡」
「いや、ダメだからな?」
「最近声かけてくる人、心なしか減ったんですよね♡効果アリかもですっ♡」
「だから、バレちゃダメなんだからな?」
「もし聞かれたら、とぼけちゃえばいいんですよ♪」
ご機嫌な夏月を連れ帰り、家に着いたらいつも通り、キスして、一緒にお風呂に入って、またキスをする。
今日の夏月はすごく物欲しそうな目で俺を見つめてて、俺は夏月を引き寄せてOKサインを出した。
一週間ぶりにしたセックスは、脳が痺れるくらいに気持ちよくて、このまま夏月と全て溶け合えたらいいのにとさえ思ってしまった。
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