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第933話
予定通り駅に着くと、改札前の柱を背もたれにして待っている夏月を見つけた。
近づいて肩を叩くと、ハッとしたように顔を上げる。
「綾人さん!」
「お待たせ。迎えにきてくれてありがとう。」
「俺が迎えに来たかっただけです♡帰りましょう。」
夏月はご機嫌な様子で俺の手を握り、帰路につく。
俺より少し大きくて、指が長くて形が綺麗。
いつも俺を幸せに導いてくれる、温かくて優しい手。
当たり前のように繋がれる手が、客観的に見るとやっぱりあり得ない光景で、でもどうしても離したくなくて、ぎゅっと力を込めて握り返した。
「今日は一緒に行けなくてごめんなさい。」
「ううん。大丈夫。」
「どうだった?」
「薬の期間またあけて、次の受診は一ヶ月後だって。薬切れるかもしれないから、夏月も来てって言ってた。」
「もちろんです。薬終わりになったら嬉しいですね。」
自分のことのように嬉しそうに微笑んでそう言ってくれる。
やっぱり朝のは俺の勘違いだったのだろうか?
こういうのって本人に聞いてもいいものか?
「綾人さん?」
「あ…。えっと……。………何もない。」
「そう?」
言えなかった……。
だってこんなに優しくしてくれてるやつに、ただ朝の様子が少しおかしかったからって、俺のこと嫌いになった?なんて重すぎるだろ…。
「言いたくなったら言ってね?」
「ん。」
何か言えずにいるってことは夏月にはバレバレだった。
俺のタイミングを待ってくれる優しさも好き。
全部大好きだ。
「夏月…」
「はーい。」
「愛してるよ。」
「へっ?!」
「さっきのメッセージの返事。」
照れ臭くて送れなかった愛の言葉。
ちゃんと伝えたくて、何の脈絡もなく今言った。
夏月は驚いて目を開け、頬をピンクに染めて幸せそうにはにかんだ。
「俺も大好き。大大だーいすきっ!愛してる!」
「ははっ」
「帰ったら綾人さんからキスしてほしいな〜。」
「いいよ。」
「っ!帰ろ!!早歩き!綾人さんっ!早くっ!」
夏月は尻尾をぶんぶん振って、ご機嫌なわんこみたいに俺の手を引く。
家のドアをくぐれば、もうそこは俺たちだけの空間。
夏月の後頭部を両手で引き寄せ、唇を重ねた。
「んっ…、夏月…っ」
「もっとシて…」
「んっ、んふ…」
夏月は俺を支えながらゆっくり玄関に座る。
身長差も何も気にならなくなって、俺は夏月をそのまま押し倒して、舌を入れてもっとキスを深くした。
「ぁ…はっ…、夏…きッ…」
「気持ちいい。もっとして…?」
「んっ、夏月…ッ、ふぅ…ン…♡」
夏月の手が服の裾から入ってきて、腰や背中を擽る。
擽ったくて力が抜けて、夏月に体重をかけてのし掛かる。
夏月はクルッと身体を反転させ、いつの間にか俺が押し倒される体勢に変わっていた。
「あれ…?」
「俺以外にはこんな簡単に押し倒されちゃダメですよ。」
「あっ…んん…」
膝で股間を刺激されながら、何度も何度も唇を重ね合った。
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