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第934話
昼ごはんを食べ終わりソファに座ると、夏月もソファに座り、俺に隙間なく詰め寄った。
「狭い。」
「嬉しいくせに。」
「………。」
図星だったから何も言い返せず、夏月にされるがまま頬や髪にキスを落とされる。
よくもまぁ三十路のおっさんにこんな愛を注げるよなぁ。
俺の顔が夏月の好みの顔でよかった。
父さん、母さん、この顔で産んでくれてありがとう。
「綾人さん。」
「ん?」
「明日外食か手料理どっちがいい?」
明日…?
そっか。明日は俺の誕生日だ。
ハートマークいっぱいのカレンダーを見て思い出す。
「そりゃ夏月の手料理のが嬉しいけど。」
「っ!!任せてください!」
夏月は嬉しそうに笑って、スマホを持ってソファを立つ。
スマホ…?
もしかしてこいつまた…。
「待て待て。まさか予約してんの?キャンセル代は?」
「今日だったら多分半額くらいで大丈夫です!」
「じゃあ外食にしよ!勿体無い!」
「あ〜。出た。綾人さんの勿体無い精神。いいんですよ。俺の手料理って即答してくれただけでむしろプラスですからっ♡」
プラスって…。
どうせ夏月のことだから、高級レストランとか予約してそうじゃん。
勿体無いだろ、どう考えても。
「予約してくれたなら、そこ行きたい。夏月の手料理ももちろん食べたいけど…。」
「ん〜…。まぁたまにはいっか。今から仕込んでたら綾人さんとイチャイチャできないし。」
ホッ…。よかった…。
また無駄に金が飛んでいくとこだった…。
「綾人さん、綾人さんっ」
「何?」
「明日は綾人さんの誕生日と、もう一つ大事なイベントがあります!何でしょうか!」
急にクイズ…(笑)
つーか、覚えてるに決まってる。
俺もこの日を楽しみにしてたんだから。
「「同棲して一年!」」
自信満々に答えると、夏月とハモった。
夏月は目を細めて幸せそうに笑う。
「なんだ。綾人さんも覚えてたんだ?」
「当たり前だろ。」
「とか言って、俺がクイズ出すまで忘れてたでしょ?」
「バーカ。覚えてたよ。」
夏月は「本当かなぁ〜。」なんて言って俺を揶揄う。
でもそっか。もう夏月と同棲して一年も経つのか…。
「早いな。」
「ねーっ。あっという間でした。綾人さんと離れてたあの二ヶ月ちょっとは、信じられないくらい遅く感じましたけど。」
「おまえ結構根に持つタイプ?」
「寂しかったんだもん。」
ぎゅーっと抱きしめられて、夏月がいつもより幼く見える。
可愛いな…。
「もう二度と離さねぇよ。」
「綾人さん格好良い♡」
「茶化すな。」
「俺も絶対綾人さんのこと離してあげない。」
甘えたであざと可愛い夏月に内心悶えながら、イチャイチャと触れ合うだけのお昼を過ごした。
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