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第936話
真っ直ぐ俺を見つめる夏月。
恥ずかしいのに目が逸らせなくて、鼻先が触れるほど近付くと、俺は思わず目を閉じる。
「ん…っ」
そっと唇が重なる。
何度も触れたり離れたり、もどかしくて目を少し開くと、夏月はまだじっと俺のことを見つめていた。
俺と目が合い、クスッと笑う。
恥ずかしくて、また目をぎゅっと閉じると、唇じゃない何かが唇に触れる。
「柔らかいね。綾人の唇。」
「…っ///」
「ふっ。目ぇ開けた。」
夏月は俺の唇を指で遊び、俺と目を合わせながらもう一度唇を重ねた。
次は何度も角度を変えて重なり、時々強く唇を押し付けられる。
キスしながら触られたりはしょっちゅうだけど、キスだけって言われてるからか、どうしても唇に意識が集中する。
夏月の唇ってこんなに柔らかかったっけ。
気持ちいい…。
「ぁ…ん…」
「嫌だったら言ってね。」
「んっ…」
夏月は下唇を優しく咥えたり、舌先で俺の唇をなぞったり…。
いつもされてることなのに、いつも以上に感じてしまう。
夏月のシャツをキュッと握ると、安心させるように優しく背中を撫でられる。
「…夏…ン…」
「集中して?」
「んンゥ…♡」
好き。大好き。
夏月のことが好きって気持ちが、体のあちこちから溢れ出してしまうんじゃないかと思うくらいにいっぱいになる。
重ねるだけのキスじゃ物足りなくて、べぇっと舌を出して夏月に見せると、夏月はくすりと笑った。
「可愛過ぎ。」
「んっ♡」
「愛してるよ、綾人。」
夏月の舌が口内に侵入する。
歯茎をなぞられて、気持ち良くてゾクゾクっと身震いする。
夏月の舌の動きに誘導されるままに口を開けると、歯茎の裏も丁寧になぞられる。
ゆっくりと犯される感覚に快感を覚え、ビクビクと体を震わせた。
「はっ…、んん…ッ、ぁっ…」
くぐもった喘ぎ声を上げると、夏月は両手で俺の側頭部を掴んでもっと深く舌を入れる。
夏月の舌先が俺の舌の付け根をぐいぐいと押さえつける。
そこは何かのスポットなのか、唾液がいっぱい溢れて夏月の唾液と混ざった。
飲み込んでも間に合わず、唾液が口角から垂れていく。
「はっ…ぁ、夏月…ッ…♡」
「綾人の口ん中、あったかい…。気持ちいいよ。」
「んんっ…♡」
夏月も同じこと思ってくれてるのが嬉しくて、幸せで涙が溢れる。
二人きりの薄暗くて静かな部屋で、唾液が絡む水音やシーツの擦れる音がやけにクリアに聞こえて、耳からも犯されてるみたいな感覚に襲われる。
「ひっ…ぁ…、あッ、ぁ♡」
上顎をなぞられて、大きく身体が跳ねる。
夏月のペニスを咥えた時も、上顎に擦れたときにすげー気持ち良かった。
多分ここが俺の口の中で一番気持ち良いとこなんだって自分でも分かるくらい…。
全身から力が抜けるくらい気持ち良くて、でもリラックスしてるわけじゃなくて、興奮で呼吸が荒くなる。
射精感に襲われて、下腹部を夏月の体に押し付けた。
「ふっ…、綾人さん、イキたい?」
そう聞かれて、こくこくと首を縦に振った。
夏月はまた唇を重ねて、俺も堪らなくなって必死に舌を絡ませる。
後頭部を引き寄せられて上顎をなぞられた瞬間、俺はビクンッと体を震わせながらキスだけで絶頂に達した。
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