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第940話

ぷるぷるのフレンチトーストを食べ、ソファに腰掛ける。 去年の誕生日は俺の家でキーケースと謎の鍵をプレゼントされて、そしたら二人で住む家の鍵だとか言われてめちゃくちゃ喜んだっけ。 新しい家で夜までヤッて、そんでワイン飲んで酔ってまたシて…。 思い出話に花を咲かせていると、夏月が「あ。」と何かを思い出した。 「そういえば綾人さん、去年ワインで酔って、自分の腕噛んだんだった。」 「え……。」 それは…。 夏月にめちゃくちゃ中擦られて、意識飛んじゃいそうになって、でもちゃんと覚えておきたくって夢中で……。 「覚えてないとは言わせませんよ!あー…、やっぱワイン飲むのやめとこっか。」 「え!?やだ!!飲みたい!!」 「だって綾人さんがまた自分のこと傷つけたら嫌だもん。」 「しない!絶対しないって約束する!な?お願い…!」 服を掴んでお願いすると、夏月は俺を見つめて、はぁ〜…と深いため息をついた。 せっかく朝からいい感じだったのに、怒らせちゃったかな…。 「綾人さんはズルい。可愛すぎて逮捕されちゃいますよ、こんなの…。」 「は…?」 「そんな可愛くおねだりされたら、ダメって強く言えない…。」 「じゃあ飲んでいいのか?」 「……まぁ、元はと言えば俺が買ってきたしね。綾人さんの喜ぶ顔が見たくて…。」 夏月が折れた! お酒飲める♪ フンフフン♪と鼻唄を歌ってると、夏月がムスッとした顔で俺を抱きしめる。 「自傷行為したら没収だからね!」 「しねーよ。」 「えっちなおねだりとかは大歓迎だから!!」 「ぷっ…!はは!わかった。覚えとく。」 怒った口調で願望言ってくるのウケる。 笑っていると擽られて、涙が出るほど笑わされた。 笑い疲れて一瞬ウトウトして、気づいたら昼で、夜はコース料理で量も多いだろうからと、昼は軽めにサンドイッチを作ってくれた。 「夜行くとこってドレスコードある?」 「スマートカジュアルでいいですよ。」 「オッケー。じゃあ服選んでくる。」 部屋に行きクローゼットを開ける。 ネクタイはたしかここに……。 ん? ネクタイが並んでいるいちばん手前に見覚えのない包装紙。 昔買ったものかと開けてみると、某ハイブランドのおしゃれな黒いネクタイ。 柄とか好みだけど、これ絶対夏月のだよな。 「夏月〜、これ見覚えある?」 「あぁ。それは綾人さんへの誕生日プレゼント。」 「へぇ〜、そっか。………って、え?!」 あまりにも自然に言われて一旦受け入れそうになったけど、プレゼント?! 固まっていると、夏月はソファから下りて俺のそばに来る。 「柄好きじゃなかった?」 「いや、好みだけど…。」 「よかった。付けてみてよ。」 そう言われて、シャツを羽織ってからネクタイを締めて、夏月の前に立った。 「どう…?」 「似合ってる。想像通り。」 「高かったろ?ワインも買ってくれたのに…。」 「あー…。まだありますよ?」 「へ…?」 「プレゼント。家のあちこちに隠してるので、探してみてください。あと3つね。」 「3つも?!」 驚く俺を見て嬉しそうに笑う夏月に見守られながら、俺の宝探しが始まった。

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