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第943話

夏月にもらったネクタイをつけてジャケットを羽織る。 「綾人さん、着替えた?」 「おー……。」 コンコンとノックされ、扉が開けられる。 ドアにもたれかかってこっちを見つめる夏月。 うっわ…。 相変わらずこの男、格好良すぎるだろ…。 「スタイル良すぎ…。」 「そう?綾人さんもいいじゃないですか。それに、ネクタイ似合ってる。」 「夏月も似合ってるよ。」 「当たり前じゃないですかっ♡綾人さんにもらったものを着こなせないなら、余裕で整形します。」 「何バカなこと言ってんだ。」 バレンタインデーにあげたネクタイ。 てか、よくよく考えたら同じブランドじゃん。 「あ。気づいちゃいました?ほぼおそろいです♡」 「わざと?たまたま?」 「わざとに決まってるじゃないですか。俺と綾人さんじゃ服の系統が違うから、柄は変えましたけどね。」 「二人でハイブランドって、見せつけてるみたいで嫌味に取られないかな?」 「そんな嫌味なこと言う人いないようなレストランなんで大丈夫です。」 夏月は俺のネクタイを正し、満足げに微笑んだ。 やっぱ高いとこ予約してるんだろうな…。 「綾人さんの用事って時間かかる?」 「ううん。そんなにかかんないと思う。」 「じゃああと2時間はゆっくりできそうかな。」 「着替えるの早すぎたな。」 「イチャイチャしようと思ったのに、皺になるからできないじゃん…。」 急に青褪めたかと思うと、理由はただの下心。 ぷっ…(笑)本当いちゃつくことしか考えてねぇな、こいつ。 俺も人のこと言えないんだけど。 「ぉわっ?!」 「隙あり。」 夏月のネクタイを引っ張り、唇を奪う。 キョトンとして俺を見て、固まっていた。 「ビビった?」 「やば……。今のギュンッてした…。」 「は?……んんっ!?」 「強引な綾人さんもイイ……♡」 「ちょっ!夏っ…、んむぅ♡」 後頭部を引き寄せられて、口内に深く舌が侵入する。 もう…、どこでスイッチ入った? つーか、マジでうますぎ…。 「ん…っ、ん、夏…月っ!待っ、ぁ…♡」 「かわいー……。大好き。出かけるまでずっとキスしてようね♡」 「そ…っ、れは長すぎ…!!」 「あはは♡嘘ですよ♡」 夏月は笑いながらそう言ったのに、結局1時間はキスし続けた。 俺は疲労でぐったりとソファに寝転んで、出発の時間までそのままうたた寝してしまった。

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