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第947話

お風呂でたっぷり愛されたあと、バスローブを羽織ってベッドに向かう。 押し倒されて、また唇が重なる。 「綾人、いい…?」 「ぁっ…ぅ♡も、もう3回もシた…っ!」 「足りない。……ダメ?」 縋るようにそう聞かれ、断れるわけもなく、また脚を開く。 夏月と繋がると、少し痛くて、でも嬉しくて、気持ち良くて、何も考えられないくらい幸せで満たされる。 どうすれば夏月はずっと俺だけを見てくれる? 俺は何を返せばいい? そんなことを考えては、気持ちよさに思考が飛んでいく。 「はっ…、綾人…っ、綾人……」 「…な…つき…」 「愛してるよ。綾人さん、愛してる。一生離さない。」 「…ッ、離さないで……」 何度キスしても、何度抱かれても、どれだけ愛されたとしても、俺の不安は消えないのかもしれない。 でもそれは夏月を信用していないからじゃない。 自分への自信のなさと、男同士という現実。 それがどうしようもなく俺を不安にさせる。 「はぁ……、さすがに疲れた。綾人さん、大丈夫?」 「夏月、すごいな…。」 「だって綾人さんが可愛すぎて止まんない。あ、待っててね。水取ってくる。」 夏月はゴムの口を縛ってゴミ箱に捨て、ベッドから降りて冷蔵庫の前にしゃがんだ。 ゴミ箱はティッシュとゴムで溢れかえりそうだ。 ぼーっとしていると、ボスンッとマットレスが沈む。 夏月がペットボトル一本持って俺の隣に座った。 ゴキュゴキュと気持ちいいくらいに音を立てながら、水が夏月の中に入っていく。 水を飲む時の夏月の喉の動きも、なんかドキッとしちゃうんだよな…。 「綾人さんもいる?」 「うん。もらっていい?」 「ん。」 当たり前のようにキスされて、水が入ってくる。 口移しも慣れたもんだよな。 初めは上手くできなかったし。 「普通に飲みたい。」 「えー。」 夏月が口を尖らせながらも、ペットボトルを俺に手渡す。 二人で一本を飲み干し、ベッドに寝転んだ。 「夏月…、好きだよ。」 「うん。俺も。愛してます♡」 夏月の方に顔を向けると、夏月はじっと俺を見つめていた。 あぁ、好きだな…。 好きだからこそ…。 「俺さ…、本当に夏月のこと独り占めしててもいいのかな?」 「今更何言ってるんですか。」 「だってさ…、夏月、格好良すぎてみんな惚れちゃうし、もちろん見た目だけじゃなくて、中身が一番好きなんだけど、とにかく全部完璧じゃん…?」 「綾人さんにそんなに思ってもらえてたら、俺は超超超幸せ者なんですけど?」 夏月は分かってない。 自分がどれほど人を惹きつける魅力があるかって。 俺しか目に入れてないことに安心するけど、その一方で他も目に入った時に俺がちっぽけすぎて幻滅しないかなって…。 たられば話ばかり考えている俺は、今を損しているのかな。 「というか、不安なのは俺も一緒です。」 「え?」 「綾人さんはすごく魅力的だし、俺には欠けてる大人の魅力とか、色気も可愛さも溢れ出てるし、いつ誰に取られるか不安で不安で仕方ないんですからね?」 「は?!そんな魅力も色気も可愛さもねぇから!!」 「ありますよ!俺のことばっかり褒めて!自分のこと鏡でもう一回見つめてください!!」 夏月はぷーっと頬を膨らませて俺を叱咤した。 でもすぐに優しい顔で、俺の頭を撫でる。 「不安に思うのは好きだからですよ。」 「うん…。」 「だからこれからもずっとずーっと一緒にいて?一緒にいればそんな悩みなんてぶっ飛んじゃうよ。俺が全部忘れさせてあげる。」 「っ…!………大好き。」 「あはは。俺も♡」 夏月に抱きしめられて、安心と疲労ですぐに夢の中へ旅立ってしまった。

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