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第949話
時は遡り、オーダーし直したバングルが届く二週間前。
分かりやすく言うと、俺の誕生日の一週間後。
幸せいっぱいで三日間仕事をこなし、今週末も祝日でのんびり羽を伸ばせる三連休のはずだった。
夏月があるものを持ってくるまでは…。
「あーやーとさんっ♡」
「ん〜?何?」
「バングルの刻印、オーダーできちゃいましたっ♡」
「本当か?!すげー。やっぱイケメンが頼むといけちゃうもんだな…。」
「いや、顔関係ないですよ、多分。」
そんな幸せな会話をしていたはずの昼下がり。
夏月の作ったパスタを食べて、夜はグラタンを食べて…。
一緒にお風呂に入って、ベッドに入って…。
そう、ここまでは平和だったはずなんだ。
「綾人さん、シよっか?」
「うん…っ」
「ふふ。かわい〜…。ちょっと待っててね?」
「?」
夏月に迫られて満更でもなく、抱かれる気満々で甘えていたら、夏月は急にベッドから出ていった。
いいとこで出ていくなよ…。
帰ってきたら文句言ってやろうと思ってたのに、戻ってきた夏月の両手にあるものを見て言葉を失った。
「綾人さん、お待たせ♡」
「…………」
夏月の右手には先週プレゼント(?)してくれた尿道ブジー。
左手には前にも使った潤滑ゼリー。
俺は無意識に体を後退させていた。
「今日から三連休。まだ明日も明後日もお休みだから、ね?新しいことに挑戦するチャンスだと思いませんか?」
「………やだ。」
「綾人さんの可愛く悶えるところ見たいな〜…?」
「……やだ。」
「上手にできたら目一杯甘やかしてあげようと思ってるんだけどな〜…?」
「………。」
「俺見たいなぁ…。綾人さんの可愛い姿…。」
「………わかったよ。好きにしろ。」
「やったー♡綾人さんだーいすきっ♡」
結局は俺が折れてしまった。
だって狡い。
好きな人に強請られて拒めるわけない。
夏月はいそいそと準備を始める。
「夏月……、怖い……。」
「大丈夫。」
「今日は夏月がしてくれんの…?」
「あぁ、そっか。前は俺が触っちゃダメだったもんね。今日は俺がしてあげるよ。」
「そっか。」
少しだけ安心した。
前はほんのちょっとプラグが入るだけでもビビったし。
自分であんなところに入れるのは、相当怖かったから…。
夏月がやってくれるならできる…と思う。
「綾人さん、準備できたよ。おいで。」
「………嫌って言ったら止めてくれる?」
「本当に嫌そうだったら止めてあげる。」
夏月はきっと、本気の嫌と、つい口から出てしまう嫌の違いが分かる。
信じてないとこんなに体好き勝手させないし。
夏月の膝の上に座ると、夏月は俺を抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「…っ!するんじゃねぇの…?」
「しますよ。でも綾人さん可愛いから吸ってるの。」
「な…にをっ…、んっ」
「ほら、猫吸いとか言うじゃないですか。そんな感じ。」
俺はペットと同じ扱いなのか?
なんて分かりきった質問はしない。
答えはNoに決まってるから。
「綾人さん、脚開いて。」
「ぅ……」
耳元で囁かれて、俺はおずおずと開脚させた。
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