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第952話

翌朝は息が苦しくて目覚めた。 原因は寝ている俺に夏月がディープキスをしていたからなんだけど。 「寝てるときにされたら息できねぇから。」 「はい…。」 「死ぬから。」 「はい…。ごめんなさい…。」 正論で叱ると、夏月はシュン…と耳を垂らして反省していた。 飼い主に怒られている愛犬にそっくり。 というのは置いといて…。 「じゃ、改めてキスするか?」 「……!はいっ!!」 「おわっ!?」 両手を開いてそう言うと、夏月は勢いよく俺に飛びついてきて、普通に倒れた。 後ろがマットレスでよかった…。 「綾人さん、愛してる!大好き!一生好きっ!」 「ん…っ、俺もだよ。……んー!!」 答えると、夏月は尻尾ぶんぶん振りながらキスを深くした。 大型犬に襲われている気持ち。 今日はなんだか夏月のわんこ感が強い…気がする。 「綾人さんっ!」 「ん?」 「なんか俺、今死ぬほど甘えたい気分なんです。今日はいっぱい甘えていいですか?」 っっっ!!! 可愛い!!!! 「おう!!好きなだけ甘えろ!」 「へへ♡やったー♪綾人さん、大好きっ♡」 いつもどっちかと言うと、かっこつけたがり、というか、甘やかしたい派っぽい夏月が、自分から甘えたいなんて…! 今日は全てにおいて俺がリードする。 歳上らしいところ見せて、夏月にもっと惚れてもらう!! 「珈琲淹れようか?」 「うん。なんか綾人さんが淹れてくれるの久々で嬉しい。」 はっ…!! 俺いつも夏月にしてもらってばっかりで、珈琲淹れることすらしてなかったのか…? そんなことにも自分で気づいてないなんて、俺はダメ彼氏なんじゃ…。 「綾人さんの淹れてくれる珈琲が一番好き。」 「別に…、普通のだけど。」 「綾人さんは自分で淹れる方が好き?」 そう聞かれて考える。 自分の好みは自分が一番分かってる。 夏月が俺の味の好みを完璧に熟知していることを差し引いても、夏月が淹れてくれた珈琲の方が好きだ。 なんなら夏月がブラックコーヒー出してきても、飲めると思う。多分。 「夏月が淹れてくれる方が好き。」 「でしょ?きっと愛情って何にも変え難い秘密のスパイスだと思うんですよね〜。綾人さんが作ってくれたごはんなら焦げてても美味しいもん。」 焦がしたことはあるけども。 美味かったのかよ、あれ。 「焦げた時のことは忘れろ…。はい、できたぞ。」 「わーい♡ありがと、綾人さん♡」 嬉しそうに珈琲を飲む夏月。 可愛いな…、マジで。 「昼何食いたい?」 「作ってくれるんですか?」 「あぁ。大したの作れないけど。」 「じゃあ創作パスタ作りましょうよ!一緒に作ったらきっと楽しいです!」 「そう?じゃあそうするか。」 昼は冷蔵庫にあるもので創作パスタを作ることになった。 創作なんてしたことないけど…。 夏月いたらなんとかなるか…? 珈琲を飲んだ後は夏月は俺の膝枕で眠っていた。

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