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第963話
大阪に到着し、そのまま駅内にある食事処で昼食をとる。
昼時だから会社員もまぁまぁいるようだ。
「せっかく大阪来たんだから、もっと大阪らしいもの食べましょうよ〜…。」
「食べ終わったらすぐ向かわないとだし、そんな余裕ねぇよ。」
「綾人さんと美味しいもの食べたい…。」
「最終日食い倒れするんだろ。つーか、そろそろ名前呼び禁止な。うっかり出先で呼んだらやべーだろ。」
「はーい。」
ヒレカツ定食を完食し、改札を通ってまた電車に乗る。
市内にあるからそれほど遠くはなくて、電車で数駅、そこから徒歩5分ほどで目的地に到着する。
さすが大手…。
ビルが高い。
正面入り口から入り、真っ直ぐ受付に向かう。
「すみません。本日14時から営業部長の池田さんと約束させていただいています、Sコーポレーション営業部の望月と城崎です。」
「かしこまりました。確認致しますので少々お待ちください。」
内線で確認したあと、エレベーターに案内される。
目的のフロアに到着すると、エレベーター前で数人の社員が立っていた。
「はじめまして、営業部長の池田です。本日はご多用のところ、ご足労いただきありがとうございます。」
「いえいえ。とんでもありません。こちらこそお時間作っていただき、ありがとうございます。Sコーポレーション営業部、主任の望月です。」
「城崎です。よろしくお願いします。」
「こちらです。どうぞ。」
名刺を交換して、世間話をしながら会議室へ向かう。
よかった。優しそうな人だ。
初めて夏月と出張に行った時は、意地悪なおっさんだったもんなぁ…。
会議室に入り、プロジェクターにパソコンを繋いだりと準備を進める。
夏月が準備している間、俺は資料を人数分配り、すぐにプレゼンを開始できるように準備した。
「それでは始めさせていただきます。本日プレゼンさせていただきます、城崎です。まずはお手元の資料を……」
去年の初めての出張でもよく出来ていたけど、城崎はもっと成長していた。
分かりやすくて、声もペースも聞き取りやすくて、内容がスッと頭に入ってくる。
普段から契約とってくる理由も分かる気がするな…。
「…………以上です。何かご質問等ございますか?」
「いや……、とても分かりやすかったよ。なぁ、みんな。」
「「はい。」」
池田さんは感心し、一緒に聞いていた社員もみんな首を縦に振っていた。
やっぱり俺がフォローするところなんてなかったな…。
夏月を見上げると、周りには見えないように後ろでVサインを送ってきた。
「いいプレゼンでした。前向きに検討させてもらいます。」
「ありがとうございます。池田部長、もしよろしければ、本日お食事でもどうですか?」
「お!いいねぇ!望月さんはいける口か?」
「あ…、はい。」
「いえ。主任は弱いので、晩酌は私がご一緒させていただきます。」
夏月は俺を庇うかのように割って入った。
こういうときは飲めなくても飲めるって言わなきゃ…。
そう思ってたのに。
「ははは!そうかそうか。いやぁ、望月さん。無理なら無理って言ってくれてよかったのに!」
「すみません…。」
「じゃあ日本酒は城崎くんに付き合ってもらおうかな。お店は行きつけのところがあるんですけど、そこでもいいですか?」
「是非。」
「じゃあ19時に大阪駅で。そこからすぐですから。」
「分かりました。」
約束をしてP社を後にし、俺と夏月は荷物を置きに一旦ホテルへと向かった。
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