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第968話

夏月の言うとおり、いつもなら興奮して硬くなっているはずのペニスは反応していなかった。 夏月の手を振り解いて股間に触れると、ふにゃん…と柔らかい感触があった。 「嘘……だろ……。」 「ごめん。本っ当に期待させてごめんなさい。ていうか俺もツラい。えっちな綾人さんに酔いも覚めてきたのに、ここだけ反応しない…。」 「ばか………。」 「綾人さん…。」 触れてもうんともすんとも反応しない。 下着を下ろして、全く反応していないソレを見て、何だか急に悲しくなって涙がこみ上げる。 「バカ!バカバカバカ!飲み過ぎなんだよ!!」 「ご、ごめんなさいぃ〜……。」 「期待したのに!!今日するって思って…!」 「明日…!明日しましょう!?」 「嫌だ。絶ッッッッ対しない!!!」 「綾人さん…!」 夏月の手を振り解いて、シャワー室に逃げ込む。 俺だけガチガチじゃんかよ…。 阿呆らし……。 「……んっ、クソ……」 扱いて便器に性欲をぶち撒ける。 一人ですんのって、こんな虚しかったっけ…。 トイレットペーパーで先端を拭き、欲望とともに流した。 さっきからずっと、シャワー室のドアをドンドン叩かれている。 「綾人さん、開けて!お願い、開けてください!」 「うるさい。」 「ごめんね。本当にごめん。嬉しかった。綾人さんが俺のためにえっちな下着履いてくれたのも、期待してくれたのも本当に嬉しかったんです。」 「………。」 「飲みすぎてごめんなさい…。せめて愛撫させてくれませんか…?指でも唇でも、綾人さんのこと気持ちよくできる自信あるから…。ダメですか…?」 「もう自分で処理した。おまえはさっさと寝ろ。」 「綾人さん……。分かりました。おやすみなさい……。」 何でそんな悲しそうな声出すんだよ…。 分かってるよ…。 夏月は今回の出張が上手くいくように、相手が気持ちよく帰れるように酒に付き合ったんだって。 夏月が頑張ってくれたから、池田部長だってご機嫌に帰って行った。 他の社員の人も、あんなに飲める相手久々で、部長の機嫌がいいって言ってたの、俺は聞いたから…。 素直にお礼言えなくてごめん。 謝れなくてごめん。 溢れてきた涙は、シャワーと一緒に排水口に流れていった。 シャワーからあがると、夏月は既に眠りについていた。 「ごめん……。」 そっと唇を重ねる。 乾いた涙の跡が目尻に付いていた。 こんな俺なんかのために泣かせてごめん。 旅先で喧嘩なんてするつもりなかったのに…。 明日も仕事なのに…、なんか気まずいな…。 夏月に嫌われたくないと思ってるのに、嫌われてしまうような態度ばかり取ってしまう自分が嫌だ。 もっと素直になれたらいいのに。 可愛く甘えられたら…。 頼りになる年上を演じられたら…。 「こんな恋人でごめんな、夏月……。」 俺は夏月がいないベッドに入る。 冷たいな…。 いつもはあるはずの温もりがなくて、ほろりと涙が溢れた。

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