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第971話
「おはよう、綾人さん。」
甘い夜の次の日は、甘い朝が待っている。
キスして目が覚めるとか、俺はおとぎ話のお姫様かよ。
そんで、王子様みたいにキラキラしてる俺の彼氏…。
「身体大丈夫?今日歩けそう?」
「うん、平気。」
「今日はお昼にたこ焼きとお好み焼き食べて、夕方にどて焼き食べて帰りましょう。あとお土産に豚まんと、ロールケーキとチーズケーキ。」
「そんな食える?」
「お土産は柳津さんとかちゅんちゅんにも分ければいいですよ。あと圭さんも甘いもの好きですし、ロールケーキは透さんのところにお土産で持って行きましょう。」
「いいね。」
服を着替えてホテルを後にする。
よかった。空は雲ひとつない快晴で、お出かけ日和だ。
まずは道頓堀の方へ向かった。
うわ…。うわぁ〜!!
「夏月!見ろよ!蟹が動いてる!!……あっ!あれ有名なやつ!記念にポーズして写真撮りたいけど、この歳にもなると恥ずかしいな。」
「ふっ…、あはは!」
「えっ、何?」
あちこちに目を奪われていると、夏月が吹き出すように笑った。
俺なんか変なことした?
あ。もしかしてテンション高過ぎた??
「ごめん…。恥ずかしかったか…?」
「違う違う(笑)前にね、ちゅんちゅんと大阪出張に来た時に、綾人さんだったらこんな反応しそうだな〜って思ったの、そのまんまの反応だったから可愛くて、つい。」
「へ?」
「いいよ。写真撮りましょう。」
夏月は楽しそうに笑いながら、通行人に声をかけてスマホを渡す。
手を引かれて橋の上に並んだ。
「え?本当に撮んの?」
「綾人さん、早く。恥ずかしいってば(笑)」
「待って待って?こう??」
「撮りまーす!はい、チーズ!」
両手を挙げて片足を上げる。
撮ってもらった写真を見たら、三枚のうちの一枚は俺が不思議そうな顔してて、もう一枚は目を瞑ってて、ちゃんと撮れているのは一枚だけだった。
「目ぇ瞑ってるやつ消して!」
「嫌だ♪可愛いもん。」
「消せってば!」
「やーだ♪」
夏月のスマホを奪おうとすると、ひょいっと避けられて、夏月に抱きつくみたいな体勢になる。
この…っ!
ぐっと手を伸ばすと、指先がスマホに触れる。
やっと届いた!と思って顔を上げると、超ニコニコの夏月に抱きしめられた。
「なぁ、みてみて!あの人らカップルかなぁ?」
「ほんまや。めっちゃお揃いやん。」
戯れてたら、通りすがりの女子高生二人組にひそひそ噂されていた。
めちゃくちゃ聞こえてるんですけど…。
そうじゃん。今日は腕時計もバングルもネックレスもお揃いだよ…。
さっき写真撮ってくれた人にも勘付かれてるんじゃ…。
「周りの目が気になる?」
「えっ…。」
「気になるなら外していいよ。俺の自己満だし。」
そう言った夏月の表情は少し悲しそうに見えた。
俺、なんてこと言わせてんだよ…。
「気になんないから!」
「本当?」
「本当!なんなら見せつけてやろうぜ!」
夏月の手を握ると、夏月は嬉しそうにふわっと笑った。
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