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第978話

電車で数駅、約三ヶ月ぶりの倉科さん宅。 このマンション、相変わらずデカすぎるだろ…。 「おじゃましまーす。」 「お邪魔します。」 「わあぁ!もっちーさん、夏月くん!いらっしゃい!」 ドアが開き、ニコニコの圭くんが出迎えてくれる。 家の中からいい匂いがする。 「あ。もしかして紅茶作ってくれてる?」 「うん。夏月くんたちがスイーツ持ってきてくれるって言ってたから。」 「じゃあこれは今度二人で飲んでください。」 行く途中に百貨店で買った紅茶が入った紙袋を渡すと、圭くんはぱぁ〜っと笑顔になった。 「これ美味しいとこのじゃん!」 「そう。綾人さんが好きなんだ、ここの紅茶。」 「美味しいよね!えー嬉しい!ありがとう!ちなみに今作ってるのは、ここと同じくらい美味しい俺のオススメの紅茶!もっちーさんも気にいると思うよ!」 「へぇ〜。楽しみだな。」 「さ!どうぞどうぞ!」 中に通されついていくと、リビングにはソファで寛ぐ倉科さんの姿があった。 「お邪魔します。」 「おう。ゆっくりしていきな。」 「もぉ〜!!透!ちゃんと玄関まで挨拶来てよ!!せっかくお土産持ってきてくれたのに!!」 圭くんが怒りながらソファに近づいた瞬間、圭くんの姿が消えた。 倉科さんに捕まったらしい。 腕の中で抵抗する圭くんは、それまた倉科さんのS心を擽りそうな可愛らしい抵抗をしていた。 「つーか、夏月。独占欲強すぎ。」 「えー?」 「望月さんの首、誰が見てもわかるぞ。明日から仕事だろ?」 指をさされ、キスマークのことを思い出して顔に熱が集中する。 やっぱりバレるじゃん…!! 咄嗟に手で隠すと、圭くんがソファの影から顔を出した。 「それ困るよね〜。消し方教えてあげよっか?」 「え!消せるの?!」 「うん〜。透もよく付けてくるから困るんだよね。もっちーさん、こっち来て!」 圭くんは倉科さんの腕の中から抜け出し、手招きしながらリビングを出ていった。 辿り着いたのは洗面所。 「消したいのどこ〜?見せて。」 「この辺だけでも消せたら大丈夫だと思うんだけど…。」 「うわ…、すっご…。びっしりじゃん。」 若干引いている圭くんの反応を見て、俺も苦笑する。 さすがに倉科さんでもここまではしないのか。 独占欲は強そうだけど、色々とスマートそうだもんな…。 「ここをこれでクリクリ〜と……。できた!どう?」 「え……。わ!すごい!」 言われるがままに鏡を見ると、さっきまで真っ赤だった首筋がいつも通りになっていた。 驚いて圭くんを見ると、化粧品を手に持っていた。 「透につけられた時のために買ったんだよね〜。こっちがコンシーラーって言って、ニキビとかシミを隠す化粧品。で、こっちがファンデーション。この二つである程度隠せるよ。」 「へぇ〜!上手だね。」 「しょっちゅう付けられて困ってるからね。もっちーさんも買うといいよ。」 「うん!ありがとう!」 オススメのメーカーのものをメモしてもらい、リビングに戻った。

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