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第981話

「おかえりなさぁ〜い!!寂しかったです〜!!」 「キモい。引っ付くな。」 「だってぇ〜。二人ともいないなんて寂しいです!」 「たかが二日だろうが!」 「休日合わせて四日も会えませんでしたー!」 月曜日出社すると、ちゅんちゅんが飛びかかってきた。 夏月は鬱陶しそうにちゅんちゅんを払いのけ、俺の隣にくる。 夏月のやつ、ちゅんちゅんに随分懐かれてんな…。 俺もか…。 「ちゅんちゅんにお土産買ってきたよ。」 「まじっすか!」 「涼真もな。」 「なになに?何買ってきてくれたんだよ?」 「チーズケーキ。消費期限明日までだから、昼休みにみんなで食べよう。」 「やったー!そこ美味いとこのじゃん!」 涼真とちゅんちゅんは嬉しそうに飛び跳ねていた。 他の同僚たちにも小分けできるようなお土産を買ってきたから、休憩室に置いておいた。 「ありがとうございますっ!」 「サンキュー。」 お土産に気づいた同僚たちは、通りすがりにお礼を言ってくれた。 大したもの買ってないけどな…。 まぁこういうのは気持ちだ。うんうん。 「主任、お土産ありがとうございます。」 「おー。」 蛇目もわざわざお礼を言いに来た。 いや…、多分こいつはお礼だけじゃない。 「城崎くんとの旅行は楽しめましたか?」 「旅行じゃねぇし。」 「またまた。ホテルではお楽しみになったんでしょう?首元隠さないといけないくらい大惨事みたいですし。」 「…っ!!」 蛇目に揶揄われて、顔に熱が集まる。 あいつらは騙せても、さすが蛇目はこういうのには目敏いらしい。 顔を逸らすと、背後から抱きしめられた。 「俺の先輩に手ぇ出さないでもらえます?」 「もう来ちゃいましたか。でも、手は出してませんよ?」 「揶揄うのもやめてもらっていいですか。俺の先輩、すぐ赤くなっちゃうので。」 「城崎くんは相変わらず独占欲が強いですね。あまり強過ぎると呆れられてしまいますよ?」 「大きなお世話。」 頭上でバチバチと火花が飛び散っていそうな睨み合いが始まった。 始業開始の時間とともに、二人とも持ち場に戻らせて、俺は仕事に取り組んだ。 昼休みに入る直前、久米さんが話しかけてきた。 「望月くん、今いい?」 「はい。どうしました?」 「お土産ありがとう。向こうでの収穫はあった?」 「城崎のおかげで手応えはありましたけどね。ただ相手も大手なので、契約に応じてくれるかは何とも…。」 「そっかそっか。何にせよ、お疲れ様。」 「ありがとうございます。」 もし契約成立したら、夏月にお祝いしてやりたいな…。 ぼーっとしていたら、また久米さんに話しかけられる。 「あっ。まだ何かありましたか?」 「えーっと…。すごく個人的なお願いなんだけど、聞いてくれる…?」 「え?あ、はい…。」 「今週末、私の家に来てくれないかな?」 「え…?」 言葉の理解ができず、俺の中で時が止まった。

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