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第982話
「ちょっと待って!!何ですか、それ!久米さん、まさか…!?」
「はっ…。城崎…。」
瞬時に俺の元へ来た夏月に俺の意識は呼び戻された。
「あ!いいところに城崎くん!城崎くんも来ない?」
「へ…?」
「弥彦と鈴香がね、二人に会いたがってるの〜!ほら、望月くん、今年の納涼会来れなかったじゃない?」
「え。あ…、はい…。」
「それでね、今年のハロウィンは月曜日だから、今週末に一日早いけどうちでホームパーティーをすることになったの。仮装したうちの子たちと会ってくれないかな?もちろんお菓子は私が用意するし、二人は来てくれるだけでいいんだけど…。」
は…、ハロウィン……。
びっくりした…。
そういうことなら…。
「けど日曜は…」
「もちろん二人の休みを全部もらうつもりはないの!ちょっと顔出してくれたらいいから!ダメかな…?」
夏月は少し困り顔。
日曜ってなんか予定あったっけ?
ない……よな?
夏月は何かあるのかな?
「いいですよ。」
「本当?!」
「城崎は何か予定ある?俺だけで行こうか?」
「いや…。先輩が行くなら俺も行きます。」
「ありがとう!!これで二人も喜ぶわぁ!」
久米さんはキラキラした目で俺と夏月の手を握った。
弥彦くんと鈴香ちゃんにも久々に会えるし、なんだか楽しみになってきたな。
「詳しいことはまた連絡するね!」
「お願いします。」
「じゃあ当日よろしく!」
軽やかな足取りでデスクへ戻っていく久米さんを見送り、夏月を見上げる。
「焦った…。久米さんシングルマザーだし、綾人さんに気があるのかと…。」
「そんなわけねーだろ。まぁ俺も家誘われたのは焦ったけど…。」
「綾人さんは男の家も女の家もどっちも一人で上がっちゃダメです!はぁ…。俺だけライバル多すぎませんか?」
「夏月の方がモテるだろ。俺の方が気が気じゃねぇよ…。それより、日曜日予定あったのか?無理しなくても俺だけで行ったのに。」
「いいです…。俺が勝手に予定してただけなんで…。」
「………?」
夏月は「はぁ…」と深くため息をついた。
そして意味ありげに俺を見つめる。
「その代わり、夜は覚悟しててくださいね。」
「はぁっ?!」
職場なのに爆発したみたいに顔が熱くなった。
前置きなしにそんなこと言うなよ…!!
つーか、何!なんで夜?!
日曜の予定って何だったんだよ…?!
「望月さーん!城崎さーん!早くー!チーズケーキ〜!!」
「先に会議室行ってるぞー。」
営業部の出入り口付近で会議室の鍵を持ちながら手を振っている二人に、顔を隠してぴらぴらと手を振った。
みんなで食った大阪のチーズケーキは、ふわっふわで甘くて美味しいはずなのに、夏月の言葉が頭でループして、何だか印象に残らなかった。
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