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第983話

そして週末を迎え、日曜日。 今日は久米さん家のハロウィンパーティーにお呼ばれしている。 「仮装していく?」 「いや、来るだけでいいって言われたし。」 「でも弥彦くんとか鈴香ちゃんは仮装してるんだろ?」 「ダメ。」 「なんでだよ?絶対仮装した方が喜んでくれるって。」 なんなら鈴香ちゃんなら、猫耳とかつけるだけで喜んでくれそうだし。 100円ショップで買えそうなものをスマホで探していると、夏月は俺の手からスマホを取り上げて、俺を抱きしめた。 「綾人さんの仮装姿、俺以外の誰にも見せたくない…。」 「ふっ…。それが理由?」 「うん…。だからダメ。俺だけの綾人さんだもん…。」 「分かったよ。夏月だけな。」 頬にキスしてやると、夏月は気が抜けたように笑って、唇にキスし直した。 あー…、可愛い……。 好きだなぁ…。 「じゃあーさっさと行ってさっさと帰って、早く二人だけのハロウィンしましょう♡」 「なんだよ?二人だけのハロウィンって…」 「いいから行きましょう〜♪」 「あ!おい、夏月…!」 夏月は俺の質問に答えないまま靴を履いてドアを開けた。 置いていかれないように慌てて靴を履いて玄関を出ようとすると、上半身だけ押し戻されて、周りから見えないようにキスされた。 「綾人さん、いってきますのキス忘れてたでしょ?」 「忘れてねーよ…。夏月が先に行くから、今日はしないのかなって思っただけ…。」 「寂しかった?」 意地悪な顔でそう聞かれて素直に頷くと、今度は家の中に連れ戻されて、ドアを閉めて濃厚な甘いキスをした。 キスに夢中になっていると、玄関の時計を見てハッとする。 「夏月…、行かないと……。」 「うん。あと一分。」 「んっ…」 止められない俺も俺だ。 結局少し物足りないまま家を出て、久米さんの家に着いたのは予定より10分遅れた15時過ぎだった。 インターホンを押すと、忍者姿の弥彦くんと魔法使い姿の鈴香ちゃんが出てきて、真っ先に俺に飛びついた。 「綾人ー!」 「綾人っ!綾人っ!」 「可愛い〜……。」 「来てくれたのね、二人とも。いらっしゃい。」 遅れて出てきた久米さんは、喜ぶ二人を見て嬉しそうだ。 16時には近所の子が来るらしく、俺たちはそれまでいてほしいと久米さんにお願いされた。 「「トリックオアトリート!!」 「わぁ〜、怖〜い。お菓子あげるから許して?」 「やったー!さすが綾人!」 「プチキュアだぁ〜!綾人、ありがとうっ!」 二人に可愛く頼まれたので、持ってきていたお菓子をプレゼントする。 弥彦くんには男の子に人気の5人戦隊のお菓子詰め合わせセット、鈴香ちゃんには女の子に人気のプチキュアのお菓子詰め合わせセットをプレゼントした。 「あら…。お菓子はうちで用意してるからよかったのに…。」 「手ぶらで伺うわけにも行かないですよ。」 「それもそうか。ごめんね、変な気遣わせて…。」 「いえ。二人が喜んでくれたんで、むしろお釣りが来るくらいです。」 弥彦くんに付き合ってテレビゲームをしていると、ソファに座る鈴香ちゃんに服の裾を引かれる。 「どうしたの?」 「鈴香、綾人と夏月と結婚する…。」 「「え。」」 「二人ともかっこいいもん…。好きだもん…。他の女の子とお付き合いしちゃ嫌…。」 「「…………」」 女の子とは付き合ってない…けど……。 俺と夏月は見つめ合って苦笑した。

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