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第999話
誰もいない会議室に入り、夏月からの着信を待つ。
『いいよ』と返事するとすぐに電話がかかってきた。
『もしもし。綾人さん、お疲れ様。』
「おう。お疲れ。」
『ふふっ。』
「なんだよ?」
『素っ気ないけど、声のトーンが上がってるから。俺の電話待ってくれてたのかなって?』
電話越しなのにバレバレで恥ずかしくなった。
だって…。嬉しいんだもん……。
「だったらなんだよ…。」
『超可愛い。愛してる。』
「……俺も。好きだよ、夏月…。」
遠くにいるからキスできないのがもどかしい。
早く帰ってきてくれよ…。
『綾人さん、お昼食べた?』
「うん。」
『早いね?何食べたの?』
「うどん。夏月は?」
『俺は通話終わったら軽くウィダーとかでいいかなーって。午後も仕事詰まってるし。』
「ダメだろ。ちゃんと食わなきゃ。」
『だって綾人さんと一秒でも長く話してたいし。食事より綾人さんの方が俺にとっては元気の源なんですよ。』
俺の彼氏、素敵彼氏過ぎないか…??
ヤバい。ニヤける。
「でもやっぱり心配だから、電話しながらでいいからなんか食えよ。」
『ん〜……。じゃあその辺でたこ焼き買ってきます。』
「うん。そうして。その方が安心する。」
『じゃあ俺からもお願いなんですけど、社内のコンビニでいいので何か買って食べてください。』
「へ??」
『たった今、柳津さんから綾人さんがうどん数口だけ食べてどっか行ったってメッセが届きました。めちゃくちゃ可愛い写真と一緒に。』
あいつ……。バラしやがったな…。
仕方なく会議室を出て、通話を繋ぎながらコンビニへ向かう。
電話越しに夏月とたこ焼き屋の店主の声が聞こえる。
夏月もちゃんと買ってるみたいだし、俺も何か食べないと怒られるか…。
『綾人さん、スマホじっと見て俺の返事待っててくれてたの?』
「だって…。いつもはすぐ返事くれるから……。」
『ごめんね?』
「違う!上手くいってんのかなって心配だっただけで…!重いとかそういうのじゃねぇから!!」
『あはは。重くても嫌いになりませんよ?むしろ大歓迎っていうか。』
「本当…?」
『ほんとのほんと。綾人さん、大好きですよ。』
コンビニに入る直前にそんなことを言われて、顔が熱くなって一旦引き返した。
電話越しに顔赤くしてたら、側から見たらやべー奴だろ…。
「夏月、その急に好きとか愛してるって言うのダメ…。」
『なんでですか?』
「俺一人の時ならいいんだけど…。コンビニ入れない…から……」
『っっ!!可愛い!!ダメですよ!綾人さんの恥ずかしがってる顔、超っっ可愛いんですから!絶対に見られちゃダメです!!』
「見せるつもりねぇからやめろって言ってんだろ…。」
『やめます!!』
しばらく何気ない会話をして、コンビニに入っておにぎりを買った。
会議室に戻って飯食って、そしたらもう昼休憩の時間は終わりに近づいていた。
『じゃあ、またホテルに着いたら電話しますね。』
「うん。俺も家着いたら連絡する。」
『はい♡じゃあ午後もお互い頑張りましょう。』
「おう。じゃあな。」
通話が終わってしまった。
とても短く感じた30分。
定時に終わるために、気合いを入れて仕事に取り組んだ。
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