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第1000話
午後は少し眠かったけど、珈琲を飲んだりして眠気と闘いながらなんとか乗り切った。
18時過ぎに仕事が終わり、帰路に着く。
夜はどうしよう…。
作る気にならないし、カップ麺とかでもいいけど…。
夏月が知ったら怒りそうだし、とりあえず何か作るか。
スーパーに寄って野菜と肉を買って家に帰る。
スマホを見ると、夏月も仕事が終わって今からホテルに戻るとメッセージが残っていた。
ホテルに着いたら電話をくれるらしい。
出先からホテルまでの距離がどれくらいなのか分からないから、俺はソワソワと着信を待っていた。
19時20分、スマホの画面が光った。
「もしもしっ!」
『もしもし。遅くなってごめんね、綾人さん。』
待ちに待った夏月からの電話。
ソワソワが隠しきれずに声色に出てしまった。
「大変だったか?」
『まぁまぁですね。でも明日は早く帰れるように頑張ります。』
「うん。……なぁ、顔見たい。ビデオ通話に切り替えてもいいか?」
『はい。俺も綾人さんの顔見たいです。』
カメラをオンにすると、夏月の顔が画面に映る。
あぁ…、夏月だ……。
『綾人さん、なんて顔してるんですか…。』
「えっ…。どんな顔してる?変??」
『俺のこと大好きって顔。超可愛い。今すげー綾人さんのこと抱きしめたい。』
「〜っ///」
あああああ。全部バレバレじゃん。
夏月のこと大好きなのも正解だし、抱きしめられたいのも大正解。
表情は見えるのに、声は聞こえるのに、触れられないのがもどかしい。
『今から東京戻ろうかな…。』
「は?!無理だろ…。」
『えー?余裕余裕。』
「やめとけって…。夏月あんまり寝てないし、今日もいっぱい頑張って疲れただろ…?俺のために無理してほしくない…。」
『大好きで堪らない綾人さんのためなら、俺は海外からでも駆けつけますよ?』
「とにかくダメ!明日まで俺もちゃんと我慢するから!」
『ちぇー。』
夏月が願ってもない提案をしてくれたけど、それは夏月に無理させるのと同義だ。
時には我慢だって必要だろ…。
それこそ涼真が言ってたみたいに、転勤…なんてことになったら……。
『綾人さん…?』
「えっ?あっ!ごめんごめん!なんの話だっけ??」
『夜ご飯何食べるの?』
「あー…、野菜炒めとか適当に作ろうかなって。」
『いいなー。俺も食べたーい。残しといてよ。』
「それくらいいつでも作ってやるから。」
『本当?約束ね!』
画面の向こうで夏月が嬉しそうに笑う。
せっかく夏月と話せてんのに、嫌なこと考えるなよ、俺。
今は楽しいことだけ考えよう。
『そういえば、京都近いから大阪で情報収集中です。』
「へぇ〜。確かに隣か。」
『美味しい京料理のお店とか、甘味処とか聞いてます。楽しみですね♪』
「うん。楽しみだな。」
『絶対着物レンタルしましょうね!』
夏月と着物で京都散策…。
夏月は本当に和服を綺麗に着こなすから、油断するとすぐに目を奪われてしまう。
きっとすぐに周りの人も虜にしてしまうんだろうな…。
『綾人さんは和服もよく似合いますから、きっと周りの人も釘付けにしてしまいますね。』
「今同じこと考えてた。夏月のが目ぇ引くだろ。」
『俺に目を引かれた人はセンスないですね。』
相変わらず夏月は、俺のこと過大評価しまくっていた。
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