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第1001話
夜ごはんを作りながら今日のことを話して、出来上がったおかずを見せて見せてとごねられる。
そんな大したもの作ってないのに。
『美味しそう…。やっぱ今すぐ帰ろうかな…。』
「バカ。大阪で美味いもん食えよ。」
『一応イカ焼きと豚まん買ってきたんですけどね。』
「それだけ?栄養偏りすぎだろ。」
『やっぱり綾人さんの野菜炒めがないとなぁ…。』
「帰る口実作ろうとするな。」
夏月はチッと舌打ちして、コンビニの袋からサラダとおにぎり二つを取り出した。
ちゃんと買っていたらしい。
俺も食卓におかずを並べて席についた。
「いただきます。」
『いただきまーす。やったー♪綾人さんのもぐもぐタイムだ♡』
「なんだそれ。」
食いながら画面越しにじっと見つめられて、照れ臭くて食べづらかった。
食事の後は少しお腹を休めながら、静かすぎる部屋が嫌でテレビをつけながら話していた。
テレビの内容なんて全然頭に入ってないけど。
『綾人さん、お風呂は?』
「まだ。」
『お湯はりしておいでよ。もうそろそろいい時間でしょ。』
「一人だしシャワーでいいかな。」
『ダメ!もう寒くなってきたんだから、ちゃんとお湯に浸かって!』
夏月に言われて、風呂の栓をしてお湯はりボタンを押す。
俺一人のために湯沸かすの勿体なくね?
怒られたから入るけどさ…。
リビングに戻って、またソファに座る。
『おかえりなさい♡』
「ただいま。夏月はいつ入るの?」
『俺はシャワーですよ。』
「は?俺にダメって言ったじゃん。」
『風呂より綾人さんとの電話優先だから。』
「それは俺も…」
『綾人さんの裸、俺はじーっと見てられるから。ゆっくり入ってください。』
………?
え?…………ん??
「ビデオ通話したまま風呂入んの?」
『当たり前でしょ。』
「は?!嫌だし!!」
『なんで?いつも一緒にお風呂入ってるじゃん。』
「それとこれとは話が別だろ!無理だからな!置いてくからな!!」
『え〜?酷〜い。』
「無理なもんは無理だから!」
何考えてんだ、この変態!
俺の裸見てられるから風呂入れって…。
俺だってお前の裸見てられるんですけど!風呂入れよ!!
……じゃなくて!!
おかしいだろ、風呂でビデオ通話なんて。
頭の中で一人ツッコミしていたら、湯はりが終了したと音が聞こえる。
「じゃあ入ってくるから…」
『え、待って?!本当に置いてく感じですか?!』
「置いてくよ。」
『えぇ…。綾人さん…、俺は一分一秒でも長く綾人さんと話してたくて……』
「あーもう!じゃあ普通の通話な!ビデオ通話じゃなくて!!」
『…………ケチ。』
画面の向こうで、不満そうにぷぅ…っと頬を膨らませる夏月。
流されちゃダメだ…。
あざとすぎるんだよ、こいつは。
『綾人さん、本当の本当にダメ?』
「ダメ。」
『綾人さん不足で死んじゃう。俺が死んじゃってもいいの??』
「いや…。それはダメだけど…。」
『じゃあ見せてよ!!』
「無理矢理押し通そうとすんな!」
『みたいみたいみたいみたいみたいみたいみたいみたいみたいみたいみたいみたい』
「あーーー!!うるせぇ!分かったよ!!」
『ほんとっ…?!』
夏月の子供じみたしつこい我儘に負けて、俺はビデオ通話を繋いだまま風呂に入ることになった。
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