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第1005話
翌朝、起きてスマホを触ると通話画面だった。
そういえば、電話繋げたまま寝たんだった。
電話越しに規則正しい夏月の寝息が聞こえてくる。
出張前、あまり眠れてなかったもんな…。
俺は一足先に起きて、朝ごはんの準備をする。
『ん……、綾人さん…?おはよ……。』
「悪い。起こしたか?」
『ううん…。俺ももう起きなきゃだし…。』
オーブンの音や水道から流れる水の音で起きてしまったようだ。
寝起きの声可愛いな…。
『朝の音がするのに匂いがしない…。』
「匂いまではお届けできねぇよ。」
『今日絶対早く帰るぅ…。』
「俺の終業時刻までに帰ってきても迎えにいけないからな?」
『早く着いたら俺が迎えに行きます。』
時間ギリギリまで話して家を出る。
仕事が終わったら夏月に会える。
今日する…よな……?
明日休みだし…。
昨日のじゃ足りないし……。
夏月もきっと同じ気持ちだよな…?
「……って、俺は朝から何考えてんだ、バカ!」
破廉恥な妄想ばかりしてる自分が恥ずかしくなる。
夜はまだ先なんだから…。
そわそわしていると、突然後ろから肩に手を置かれてビクッとする。
振り向くと、よく見知った奴だった。
「蛇目…、ビビった……。」
「後ろから見ても分かるくらい耳まで真っ赤でいらしたので。また城崎くんのことですか?」
「…っ!」
「欲求不満でしたら、朝一会議室にでもどうですか?一瞬で天国見せてあげますよ♡」
「はぁ?!」
とんでもない提案をしてくる変態眼鏡男。
やっぱりこいつ危険だ!!
逃げようとすると、するりと腰を撫でられる。
「たまには彼氏以外の刺激もイイですよ。遊ぶならこういう出張の日は狙い目です。それに、意外と私たち相性良かったりして。」
「誰が行くか!俺には城崎だけだから!」
「それはそれは…。残念です。」
怒って距離を取る俺に、蛇目は爽やかな笑顔で手を振った。
なんであんなことを何事もなさそうな顔で誘うかな?!
浮気なんて絶対しないし。
夏月以外興味ないし。
俺の体は十分満足してるんだから。
………じゃあ夏月は?
夏月は俺で満足できてるのか…?
「ヤバい…。急に不安になってきた……。」
スマホで夏月にメッセージを入れようとして気づく。
電話を終えたあと、すぐに入れてくれていたメッセージ。
『愛してます。』
たった一言、その言葉を見ただけで、さっきの不安は消え去った。
夏月の言葉は全部魔法のようだ。
きっと日頃から、言葉に嘘偽りがないと証明してくれているから。
だから言葉だけで、こんなにも安心する。
「あぁもう…。早く会いてぇ…。」
夏月とメッセージのやりとりをしながら、仕事が終わるまで悶々と過ごすことになるのだった。
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