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第1010話

ランチを食べ終えて、ショッピングモールに移動する。 「どこから回る?」 「俺見たい服屋あるー。」 「じゃあそこから行こう。」 最初に圭くんが見たいといった店に行くことになった。 よく行くのか、店員さんと親しい様子で話し始めた。 圭くんは店員さんに連れられて奥の方へ行ってしまったので、俺は手前の方で服を見ていた。 「綾人さん、これ似合いそう。」 「そう?こっちは夏月似合うよ。」 「本当?買おうかな。」 「お二人ともお似合いですね。それ昨日入荷したばかりの新作なんですよ。人気なので展示している分と、裏にあと1点しか在庫がなくて。よかったらご試着されますか?」 鏡で服を合わせていると、圭くんに対応している人とは別の店員さんが話しかけてきた。 普段そんなに店員が話しかけてくるような店に行かないから少し戸惑っていると、夏月がそんな俺を見て提案する。 「着てみます?」 「じゃあ着てみようかな…。夏月は?」 「綾人さんが似合うって言ってくれたから買います。」 「一応着てみれば?」 「まぁサイズ感だけ確認したいし着てみますか。」 試着室に案内され、俺が先に試着することになった。 かわいい…。 前面にふわふわ素材で横一本柄があるスウェット。 普段着ない感じの服だけど、鏡で見た感じ似合わないってほどではない。 「綾人さん、開けていい?」 「あー、いいよ。」 鍵をあけると、ドアが開かれて夏月が入ってくる。 「なんで入ってくるんだよ?」 「店員さんに可愛い綾人さん見られたくないから。」 「可愛いっておまえ…。つーか、どう?微妙じゃない?」 「めちゃくちゃ似合ってます。買いです。綾人さんが買わないなら俺がプレゼントする。」 「いや…、どうせ夏月が買うなら自分で買うけど…。」 そんな似合ってるかな…? 夏月はなんでも褒めてくるから当てにならないんだけど…。 元の服に着替えて試着室を出て、俺の入れ替わりで夏月が中に入る。 「鍵開けてるからいつでも覗いていいですよ♪」 「覗かねぇよ、バカ。」 夏月のからかいをスルーして試着室の前の椅子に座っていると、圭くんが戻ってきた。 「あ!何か買うの〜?」 「うん。スウェット。」 「いいね!この店のスウェットの素材好きなんだよねー。もちもちっとしてない?」 「もちもち…?あ……たしかにそうかも。」 肌触り良いなとは思ってたけど、そっか。もちもちか。 これが世間的にはもちもち素材って言うのか〜と思いながら服を触っていると、夏月がドアを開けて出てくる。 「どうですか?」 「えー!似合ってるじゃん!ねーっ!もっちーさん?」 「え…ぁ…、可愛い……。」 「かわ…いいのか…。いいのか……?」 素直な感想を口にすると、夏月は戸惑いを含んだ表情で首を傾げた。 ここのお店の服が可愛い系だから、夏月が着ても格好良いというよりは可愛いになるのかも。 夏月は可愛いと言われ、どうしようか悩んでいたみたいだけど、俺と圭くんが似合ってたと後押ししたから買うことにしたらしい。 俺も夏月のと一緒に包んでもらい、ショッパーは夏月が持ってくれた。

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