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第1011話
一店舗目を出て、店先を見ながら気になったお店だけ中に入って服を見た。
雑貨屋さんにも寄ったりして、圭くんはキャッキャとはしゃいでいる。
こういうとこが可愛くて、倉科さんもメロメロなんだろうなーと思ったり…。
「あ。綾人さん、あの店見ていい?」
「いいよ。夏月がよく買うとこだっけ。」
「うん。」
夏月がよく買うブランドは綺麗めの服が揃ってて、俺には少し場違いな気もする。
店の前で待っていようかと思ってたら、手を引かれて一緒に入店することになった。
「こんにちは。お久しぶりです。」
「こんにちは。いいの入荷してますか?」
「新作はこっちです。お客様がお好きそうなのは奥にありますよ。お連れの方もゆっくりしていってくださいね。」
「はい…。」
夏月は服を手に取りながら、コーディネートのことなんかを店員さんと話してる。
客と店員なのに仲良いんだな…。
歳が近いのか、それとも服の趣味が合うからか、楽しそうに話してる。
夏月が楽しそうで嬉しいはずなのに、このモヤモヤはなんなんだろう…。
「……とさん…、綾人さん!」
「へっ?!」
「だから〜、どっちが似合う?」
話しかけられていることに気づかずハッとすると、夏月は色違いのシャツを二枚交互に合わせて俺に尋ねていた。
どっちも似合ってるけど…。
「こっちのグレーの方…かな…。」
「よかった。俺もこっちのが好き。」
ニコッと笑う夏月の笑顔に心臓が持っていかれそうになる。
夏月は他にも何着か服をキープし、店員さんはバックヤードに新しいのがないか確認しにいっていた。
自分の服を満足いくまで選んだのか、夏月は服を俺に合わせ始める。
「綾人さん、これ似合うね。」
「い、いやいや!俺ここの服と系統ちげぇし…。似合わないだろ…?」
「綺麗めも似合いますよ。綾人さんは自分にイメージつけちゃってるだけ。あと俺はお揃いも着たい。」
「お…、おそろい……」
「これなんかどうですか?綾人さんにも似合うし、俺もこのデザイン好きです。」
夏月はハーフジップを手に取って見せてくる。
たしかにこれなら俺も着れそうだし、夏月も似合いそうだ。
「俺黒がいい。綾人さんは?」
「え…っと……」
こういう時って色は別のにした方がいいのか?
全く一緒の服着て隣歩いてたら恥ずかしいかな…?
「もしかしてお揃い嫌だった?」
「え?!違う!嬉しいよ!?」
「困ってそうだったから…。」
「あー…。その、色まで揃えたら隣歩きにくいかな…とか考えてて……」
「なんで?俺は全く一緒でも嬉しいよ?手繋いで隣歩こうよ。」
きゅぅぅん……。
今めちゃくちゃトキめいた…。
何このイケメン。イケメンの暴力だ…。
「じゃあ俺も黒…でいい?」
「もちろんです。すみません。このハーフジップLとM一着ずつ新しいのありますか?」
「見てきますね。」
欲しい服全部新しいものがあったらしく、俺の服も一緒に包んでもらった。
会計出そうとしたら夏月に店の前まで追い出される。
「あ。終わった〜?」
「圭くん!ごめんね。待った?」
「ううん。ここの服ちょっと高いよね〜。」
「え。」
「まぁデザイン料だよね。俺もたまに着る〜。」
レジから遠ざけられた理由をなんとなく察した。
自分の服くらい自分で出すのに…。
「お待たせしました!次行きましょ!」
嬉しそうに店を出てきた夏月に文句なんて言えなかった。
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