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第1012話

「あっ!ここも見ていい〜?」 次は圭くんの気になる店へ入店。 格好良いのもあれば、メンズにしては可愛らしいのも様々だ。 「これ可愛いかも!」 「すげぇふわふわ…。気持ちいい…。」 「ね!肌触り良いよねー!」 圭くんが手に取ったのは、ふわふわ素材のトップス。 夏月もすげー触ってる…。 真冬は上からコートとか着ないと寒そうだけど、今の季節くらいならこれだけでも問題なさそうだ。 「こんなの着てたら、透さんが圭さんのこと離さないんじゃない?」 「うわ…。たしかに〜。ちょっとウザいかも…。」 「買わないの?」 「やめとく〜。だって透、ただでさえ冬はくっついてきて鬱陶しいんだもーん。これ以上くっつかれるなんて勘弁して〜。」 圭くんはそう言って別の服を見始めた。 『透さんが圭さんのこと離さないんじゃない?』 それって、夏月ならそう思うってことだよな…。 さっきまで圭くんが見ていた服を手に取る。 「ふわふわ…。」 たしかに離したくなくなるというのも納得だ。 これ着たら、夏月は俺のこと離さない…? でもさすがに俺に似合わないよな…。 元の場所に戻して二人の方へ向かう。 「もっちーさん、いいの見つけたー?」 「いや…。あんまり……。」 「じゃあこの店出よ〜。あとワンフロアだね!気合い入れるぞ〜!」 「その前に休憩しませんか?」 「たしかに!」 1階から2階まで見終えて、残すは3階だけ。 かなり買い回ったし、少し座りたいかも。 近くのソファに座り、夏月は荷物だけ俺の隣に置いて立ち上がった。 「飲み物買ってきます。二人はここで待っててください。」 「やったー!ありがとー!」 「いいのか?」 「はい。いい子にしててくださいね♡」 「っ!」 チュッと額にキスをされ、夏月は飲み物を買いに行ってしまった。 夏月の背中を目で追っていると、視線を感じて隣を見る。 圭くんがニヤニヤ俺を見つめていた。 「いやぁ〜、ラブラブだねぇ〜。」 「ちっ…、ちが…!?」 「違くないでしょ〜。それよりさっきのお店出る時、なんか名残惜しそうな感じだったけど、何か欲しいのあったの?」 「あー……。」 俺は圭くんにさっきの服が気になっていることを話した。 欲しい理由と、買わない理由も一緒に。 「えー!買えばいいじゃん!買いなよ!」 「でも…。もし俺に似合うなら夏月勧めてくるだろうし…。」 「関係ないって!そんな理由で着てくれたら彼氏目線絶対嬉しいと思うよー?ていうか、全然似合うと思うし!」 「………」 「今なら夏月くん買い出し行っててチャンスじゃん!内緒で買って、今度着ていっぱい触ってもらいなよ〜!」 いっぱい触る…。 想像しただけでブワッと顔が熱くなる。 「もっちーさん可愛い〜!ね!買お買お!」 「いいのかな…。」 「超いい!夏月くんの反応楽しみだな〜。また教えてね!」 夏月が帰ってくるまでに店に戻って、さっきの服を買ってしまった。 そもそもこの服の存在を気づいてくれるか自体不安だけど…。 ギュッてしてくれたら嬉しいな…。 自然とショッパーを握る手に力がこもった。

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