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第1017話

大きな荷物を預けて、着物に羽織、足袋に雪駄で京都の参道を歩く。 ヤバい。ヤバイヤバイヤバイ……。 好きな人の着物姿ってこんなにドキドキするのか? 昔付き合ってた彼女が浴衣とか着物着てた時、こんなにもドキドキしたっけ? それとも夏月が格好良いだけ…?? あれ?俺、夏月の浴衣姿でもこんなバクバクしてた? してたような気がする…! 「綾人さん。」 「っ!!」 「なんでさっきから目合わせてくれないの?」 寂しそうな声でそう言われ、ちらりと顔を上げる。 うっ!! やっぱり格好良すぎる……。眩しい……。 「俺なんかした?」 「違う…。えっと……」 「教えて…?」 「〜〜〜っ!!!」 夏月は俺の前にしゃがんで顔を覗き込んでくる。 ううううう格好良い………。 「……………すぎる…」 「え?」 「おまえが格好良すぎんだよ!!なんか文句あるか?!」 「へ……?」 夏月はぽかんとした顔で俺を見つめた。 男にこんなときめく時が来るなんて小さい頃は思いもしなかったよ!! 夏月と付き合ってからこんなのばっかりだ。 恥ずかしくて逃げようとすると、手を引かれて夏月の腕の中に閉じ込められる。 夏月も顔赤い…? 「だいすき。」 「俺も…。」 「キスしていい?」 「………ダメだろ。」 いっぱい人いるし…。 夏月は少し抱きしめる力を緩める。 周りを見渡すと、少し参道から離れた道で、俺たち以外に人は居なかった。 これを見せるために力緩めたのか…。 「どう?しちゃう?」 「でも……」 「するね。」 良識ある行動がしたいのに…。 誰に言っても恥じない関係でいたいのに…。 「んっ、ん…」 「可愛い。愛してる。」 「…はっ、ぁ…」 こいつといたら、自分の中のモラルなんて崩されて、何もかも求めてしまいそうになる。 まるで麻薬みたいに俺を虜にして離さない。 好きが溢れて、そばにいなくちゃ不安で、愛されると気持ちいい。 「なつ…き…っ♡」 「あ。人来た…。少しお預けね?」 「んんっ…」 唇が離れていく。 しっとりと濡れた唇。 俺の唾液で濡れてるんだと思うと、痺れるみたいにゾクゾクっと身体が震えた。 「行ったかな…?綾人さん、そろそろ……って。なんて顔してるんですか。」 「夏月……」 「もう…。綾人さんって麻薬みたいだね。」 「それってどういう…」 「求めても求めても足りないってことですよ。」 俺も夏月が麻薬みたいだなって思ったけど、夏月も一緒なんだ。 じゃあ夏月も俺のこと離さないよな。 夏月は建物の影で俺を抱きしめ、角度を変えながらしゃぶりつくみたいに激しいキスを繰り返した。

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