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第1021話

境内に入場してから約一時間。 やっと本堂、清水の舞台に到着した。 「すっげぇ……。綺麗………。」 うっとりとため息をついてしまうほど綺麗な景色。 こんな見事な紅葉初めて見た。 ライトアップされたらもっと凄いんだろうな…。 「綾人さんと来れてよかった。」 「うん。俺も夏月と来れてよかった。」 「あのままあの人たち撒けてなかったら、こんな落ち着いて見れなかっただろうし。まぁ混みすぎてて今も落ち着いてはないですけど…。」 ドスドスとぶつかる人を、夏月が全部守ってくれてる。 痛いよな…。 「夏月、場所変わろうか?」 「死んでも変わりません。」 「俺も男なんだけど…。」 「知ってます。綾人さんの身体に打ち身とかできたら嫌だからダメ。」 「俺もお前の体が青痣だらけになるの嫌なんだけど。」 「う〜……。じゃあもう帰る?」 「うん。早くホテル行こうぜ。」 「あーーーーー。綾人さんが積極的でツラい……。」 夏月はぎゅーっと俺を抱きしめて固まった。 なんでツラいんだよって思ったら、太腿に当たる硬い感触で察した。 でもここじゃどうしようもないし…。 「綾人さんの小悪魔…。」 「悪い…。」 「これバレたら、俺変質者じゃん。」 「治まるまでここで固まってるしかねぇな。」 「うぅ…。早く行きたいのに……。」 大パノラマで真っ赤に染まる木々を見つめながら、メソメソしてる夏月の手を握ったりして時間が経つのを待った。 俺に当ててたら逆効果なんじゃ…と思いながらもじっと待った。 耳元で夏月の熱い吐息を感じていたら俺もどうにかなりそうだったけど、なんとか二人で境内に戻る。 「ここからあと一時間か……。」 「出るだけだから入るより早いんじゃないか?」 「そうだといいんですけど…。」 予想通り四十分ほどで参道まで出られた。 どんどん陽が落ちる時間も早くなっていて、ライトアップを目的とした観光客が参道にもたくさんいた。 人混みの中を手を繋ぎながら下りていく。 歩きながらふと思う。 「そういえば、今日は全然女の人に話しかけられないな。」 いつもなら夏月目当ての逆ナンが多いんだけど。 そう思って口に出すと、夏月は繋いだ手を指差した。 「そりゃ、アピールしてますから。」 「え…。」 「俺たちのこと興味なかったら気づかない人も多いでしょうけど、さすがにナンパしようとしてるくらい俺たちのこと見てたら手繋いでることくらい気づきますよ。牽制です、これ。」 全然そんな気なしで繋いでた…。 普通にデート気分だった。 でもたしかに、デートじゃん、これ。 うん、デートだ。 デートしてる男に話しかけないもんな。 「離したい?」 「繋ぐに決まってんだろ…。」 「へへ♪」 夏月は嬉しそうに俺の手を繋ぎ直し、また歩みを進めた。 テイクアウトできるカフェで俺は抹茶ラテ、夏月はブラックコーヒーを頼んで、飲みながら坂道を下った。 坂を下りれば着物のレンタルショップに到着。 二人とも着てきた服に着替えて、荷物を受け取って店を後にした。

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