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第1022話

バスで祇園四条の駅まで移動し、カップルだらけの鴨川沿いを歩く。 もちろん手を繋いで…。 「30分後に予約してるから、少しだけそこで横にならない?」 「えっ…、おう…。」 予約してくれてたんだ…。いつの間に…。 30分後って、夏月にしては時間管理下手じゃね? 夏月がごろんと寝転んだから、俺も隣に寝転ぶ。 「ごめんね。寒い?」 「ううん。大丈夫。」 「鴨川ってカップルが一定間隔あけながら並んでるので有名じゃないですか。」 「へー。そうなの?」 「うん。だから俺もしてみたかったんです。付き合わせてごめんなさい。」 そういうことか。 だからホテルの予約、ちょっと遅いんだ。 可愛い恋人の我儘に付き合ってやるとするか。 「みんなこんなとこ座って何してんだろうな?」 「………キスとか?」 「ふっ…(笑)してなくね?」 周りを見ると、みんな甘ーい雰囲気で話してるだけ。 「ほらな。」と夏月の方へ顔を向けると、じっと見つめられた。 吸い込まれてしまいそうな瞳。 綺麗な目してるよな…。 ぼーっとしていると、視界が暗くなって、唇に柔らかいのが触れる。 「んっ…」 「……ふっ、綾人さん可愛い……」 「ん、んぅ…っ」 温かい…。 こんなとこでキスとか、誰が見てるか分かんないのに。 「な…つき…ッ、さすがに……」 「大丈夫。コートで隠してるから。」 あぁ、だから暗くなったのか。 顔元を覆うコートを除けると、辺りはもう暗くなってきていて、俺たちを見てる人たちなんて誰もいなかった。 「ふ…ははっ!」 「なんで笑ってるんですか?」 「なんでって…、怪しすぎるだろ…、ふふっ(笑)」 「バレたかな?」 「破廉恥だ、破廉恥〜。」 クスクス笑っていると、背中に手を回されて引き寄せられる。 「抱きしめていいですか?」 「もう抱きしめてんじゃん。……いいよ、みんなに見せつけるよ、俺の夏月だって。」 俺も夏月の背中に手を回す。 さすがにカップルが集う川沿いで、男二人が抱き合って寝転んでいるものだから、何人か立ち止まってヒソヒソ話していた。 見ろよ。このイケメンは俺の彼氏なんだぞって、なんだか今はそんな気分だ。 「会社の人に見られたらやべーな、これ。」 「大丈夫でしょ。みんな今頃旅館で大宴会ですよ。」 「それもそうか。」 夏月のコートと夏月自身に包まれて、外だからかなんか開放的で、すげー気分がいい。 酔いは完全に醒めたけど、夏月に触れたい気持ちは冷めないな…。 「そろそろホテル行く?」 「もう行ける?」 「30分経ったよ。」 「マジ?一瞬じゃん。」 「綾人さんに触れてたら本当一瞬。もうこれだけじゃ足りないから、早く行こ?」 手の甲にキスされて、ドクンッと心臓が高鳴る。 夏月の手を取り、すぐそばにあるホテルに二人で身を消した。

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