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第1026話

ん……。 何回もイッて、気づけば寝落ちていた。 隣で夏月も気持ちよさそうに眠っている。 今何時………? 「嘘っ?!」 「綾人さん…?どうしたの……。」 「22時!!ちょ…、どうしよう…?!」 もう旅館の夕食終わってるよな? えー…。22時なんて居酒屋くらいしか空いてないじゃん。 せっかく京都まで来たのに……。 「もうこのままここに泊まりません?」 「駄目だ…。戻ろう…。」 「夕食も食いっぱぐれたし。まぁその代わり綾人さんをお腹いっぱい頂きましたけどっ♡」 「…………」 「冗談ですよ。怒らないで?」 無言で服を着てホテルを出る準備をする。 今日旅館の夕食、会席料理だったのに…。 楽しみにしてたのに……。 「綾人さん……。また来よう?その時美味しい料理予約するから…。ね?」 「…………」 「ごめんなさい。綾人さん可愛くて夢中になっちゃって…。楽しみにしてたの知ってたのに。ごめん。許して?」 夏月だけが悪いんじゃない。 俺だって夏月のこと散々煽ったし…。 カーテン閉め切ってたから、完全に時間のことを忘れて夏月とのセックスに夢中になっていた。 「とにかく戻るぞ。飯は適当になんか食おう。」 「はい…。」 夏月はベッドから立ち上がり、脱衣所に服を取りに行く。 その背中は明らかに落ち込んでいた。 さっきまで愛し合ってて幸せだったのに、なんでこんな空気になったんだっけ…。 旅行中の貴重な一食を食いっぱぐれたから…? 違う。本当はこんな空気にしたかったわけじゃない。 俺は今日一日、夏月といれて楽しかったんだ。 「………ごめん!」 「え?」 「せっかくの旅行なのに暗い感じにして悪かった。俺、夏月と二人きりの時間取れて嬉しかった!それは嘘じゃないし、本当に一日楽しかったから!」 「綾人さん…」 「ホテル出る前にキスだけしてほしい。」 「……はいっ!」 夏月はパァッと嬉しそうに笑い、俺を抱きしめた。 へへ…。 やっぱり幸せだ…。 美味しい料理を一食逃したところでなんだっていうんだ。 目の前のことばかり考えて、大切なことを忘れかけていた。 「夏月、大好きだよ。」 「俺も。綾人さん、愛してますっ♡」 目を合わせて、何度も唇を重ねた。 幸せな気持ちで胸をいっぱいにしたままホテルを出て、寒くて体を寄せながら歩いた。 コンビニで肉まんを買って半分にして…。 いつでも食えるものなのに、なんだか今日はそれがひどく美味しく感じた。 「美味いなぁ。」 「はい!あ、見て。あそこのお店まだやってそうですよ!」 「本当だ。入ってみるか。」 「二軒目はラーメン行きましょ!今ネット見てたら美味しそうなの見つけました!」 「いいね。じゃあ腹一杯になったら旅館行くか!」 アットホームな居酒屋に入り、特別に家庭料理を振舞ってもらった。 そのあと夏月が調べてくれたラーメン屋へ行き、お腹いっぱいになってタクシーで旅館に向かった。

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