1026 / 1069
第1026話
ん……。
何回もイッて、気づけば寝落ちていた。
隣で夏月も気持ちよさそうに眠っている。
今何時………?
「嘘っ?!」
「綾人さん…?どうしたの……。」
「22時!!ちょ…、どうしよう…?!」
もう旅館の夕食終わってるよな?
えー…。22時なんて居酒屋くらいしか空いてないじゃん。
せっかく京都まで来たのに……。
「もうこのままここに泊まりません?」
「駄目だ…。戻ろう…。」
「夕食も食いっぱぐれたし。まぁその代わり綾人さんをお腹いっぱい頂きましたけどっ♡」
「…………」
「冗談ですよ。怒らないで?」
無言で服を着てホテルを出る準備をする。
今日旅館の夕食、会席料理だったのに…。
楽しみにしてたのに……。
「綾人さん……。また来よう?その時美味しい料理予約するから…。ね?」
「…………」
「ごめんなさい。綾人さん可愛くて夢中になっちゃって…。楽しみにしてたの知ってたのに。ごめん。許して?」
夏月だけが悪いんじゃない。
俺だって夏月のこと散々煽ったし…。
カーテン閉め切ってたから、完全に時間のことを忘れて夏月とのセックスに夢中になっていた。
「とにかく戻るぞ。飯は適当になんか食おう。」
「はい…。」
夏月はベッドから立ち上がり、脱衣所に服を取りに行く。
その背中は明らかに落ち込んでいた。
さっきまで愛し合ってて幸せだったのに、なんでこんな空気になったんだっけ…。
旅行中の貴重な一食を食いっぱぐれたから…?
違う。本当はこんな空気にしたかったわけじゃない。
俺は今日一日、夏月といれて楽しかったんだ。
「………ごめん!」
「え?」
「せっかくの旅行なのに暗い感じにして悪かった。俺、夏月と二人きりの時間取れて嬉しかった!それは嘘じゃないし、本当に一日楽しかったから!」
「綾人さん…」
「ホテル出る前にキスだけしてほしい。」
「……はいっ!」
夏月はパァッと嬉しそうに笑い、俺を抱きしめた。
へへ…。
やっぱり幸せだ…。
美味しい料理を一食逃したところでなんだっていうんだ。
目の前のことばかり考えて、大切なことを忘れかけていた。
「夏月、大好きだよ。」
「俺も。綾人さん、愛してますっ♡」
目を合わせて、何度も唇を重ねた。
幸せな気持ちで胸をいっぱいにしたままホテルを出て、寒くて体を寄せながら歩いた。
コンビニで肉まんを買って半分にして…。
いつでも食えるものなのに、なんだか今日はそれがひどく美味しく感じた。
「美味いなぁ。」
「はい!あ、見て。あそこのお店まだやってそうですよ!」
「本当だ。入ってみるか。」
「二軒目はラーメン行きましょ!今ネット見てたら美味しそうなの見つけました!」
「いいね。じゃあ腹一杯になったら旅館行くか!」
アットホームな居酒屋に入り、特別に家庭料理を振舞ってもらった。
そのあと夏月が調べてくれたラーメン屋へ行き、お腹いっぱいになってタクシーで旅館に向かった。
ともだちにシェアしよう!