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第1031話

「仕切り直して…、いきます!」 「よっしゃ!こい!!」 気合いの割に勢いのないちゅんちゅんのサーブが俺の方向に飛んできた。 打ち返すと、ちゅんちゅんが空振りして1点目は俺たちに入る。 「綾人、ナイス!」 「綾人さん、ナイスです!」 何故か敵に褒められる俺。 やっぱ夏月と俺は同じチームにした方がいいのでは…? 「綾人さーん、離れててねー♡」 「?」 夏月のサーブ順。 涼真の方向に向かって打つらしい。 言われた通り少し離れると、涼真の方めがけて強烈な球が飛んできた。 「城崎さん、ナイスー!!」 「…………こっわ。綾人……、俺無理かも……。」 「涼真?!」 反射神経が悪ければ確実に顔に当たっていたであろう球の軌道に、涼真はカタカタと震えていた。 えぇ……。次あのサーブ受けるの俺なんだけど……。 涼真を励まして、台の前に戻る。 「城崎さん、もう一本!」 「綾人さーん、いきますよ〜♡」 グッとラケットを握り構えていると、ふわっと高めの優しい軌道でピンポン玉が飛んできた。 力を込めてスマッシュで打ち返すと、ちゅんちゅんの方に飛んでいき、また点を獲得。 「綾人さんナイスー!」 「綾人ナイス!」 「………城崎さんはこっちでしょうが!!何ですかさっきの!!誰でもスマッシュ打てますよ、あんなよわよわサーブ!!」 珍しくまともなツッコミをするちゅんちゅんが可哀想に見えてきた。 夏月は聞こえてないふりしてるけど…。 結局その調子でゲームは進み、11-9で俺と涼真が勝った。 「もう〜!!城崎さんのせいで負けた!!」 「は?8点取ったの俺だろ?」 「望月さん相手の時にも本気出してたら、余裕でこっちが勝ってたでしょ!!ていうか、俺が点取った後の利敵行為酷すぎました!!」 「それはおまえが綾人さんに向かってスマッシュ打ったからだろ。」 敵チーム、仲悪すぎ。 場を納めようと近付くと、夏月に抱きしめられる。 「次は綾人さんと一緒のチーム♡」 「まだやるのか?」 「も、もう寝ない…?」 「やります!絶対ギャフンと言わせてやる!!」 俺と涼真はもう終わりたいなぁ…と雰囲気を出しているつもりだが、二人には全く伝わっていなかった。 こいつら1対1でやればいいじゃん…。 そうだよ、それでいいじゃん。 「俺と涼真疲れたから、夏月とちゅんちゅん二人でやるのはどう…?」 提案すると、少し考えたのち夏月が頷いた。 「ご褒美ありなら。」 「ご褒美?」 「1点取るごとにキスして?」 「は、はぁっ?!///」 「ほっぺでもどこでもいいよ。」 「うーん……。」 それならいいか…? こいつら知ってるしな…。 「はいはーい!じゃあじゃあ俺は1点取るごとにフルーツ牛乳一本買ってください!」 「なんで俺なんだよ。」 「柳津さんと望月さんで一本ずつ順番に買ってください!」 「まぁそれなら…。綾人、いいか?」 「いいよ。」 ルールは決まった。 11点先取、シングルス。 夏月は1点取るたびに俺からキス、ちゅんちゅんは1点取るたびにフルーツ牛乳。 ご褒美をかけた卓球バトル、ここに開幕。 「いきますっっ!!!」 ちゅんちゅんのやる気に満ち溢れた一声で、戦いの火蓋が切って落とされた。

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