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第1032話
「うわあああああああ!!!なんで!?なんで一点も取れないの?!!」
「弱いからだろ。」
「違う!!城崎さん強すぎる!!頭おかしい!!!」
始まって20分。
ラリーが続くこともなく、既に10-0。
なのに何故ここまで時間がかかっているのかと言うと、夏月のご褒美タイムが主だ。
「はい♡じゃあ綾人さん、次はどこにご褒美くれる?♡」
「えぇ…?」
「さっきしたとこはナシね♡」
始まってから夏月が設けた謎ルールのせいで、キスする場所に悩む。
右頬、左頬、おでこ、右の手の甲、左の手の甲、首筋、右の足の甲、左の足の甲、背中……。
そして迎えた10回目、次はどこに…?
もうだいぶネタ切れなんだけど……。
「なぁ。これは俺たち何を見せられてんの?」
「俺と綾人さんのラブラブを見せつけてます♡」
「いやそれはそうなんだけど。」
俺だって見せたくないし…!!
親友の前でご褒美キスとか普通に拷問かよ?!
キスするところを決めて、夏月の浴衣の合わせを捲る。
「綾人さんのえっち♡」
「違ぇよ。大人しくしてて。」
「はーい♡」
俺は夏月のお臍にキスして、また浴衣を元に戻した。
は〜……、顔熱い……。
「一本だけでも取ってフルーツ牛乳!!」
「綾人さんに奢らせるわけねーだろ、バーカ。」
マッチポイント。
またも一瞬で点は取られてしまい、ちゅんちゅんは呆気なく敗北した。
「綾人さーん♡勝ったよ♡」
「はいはい…。もう部屋帰る……、んぇっ?!」
「「わぁ……。」」
抱き寄せられて、唇が合わさる。
涼真とちゅんちゅんが見てる…。
ダメだ、こんなの恥ずかしい。
抵抗しようとすると、にゅるりと舌が入ってきて力が抜ける。
「ん…んぁ♡…ぁ、らめ…」
弱い力で夏月の胸元を叩いても、全く抵抗にならずにキスは続く。
もう何しても、こいつが満足するまで離してもらえないのだと察して諦めたが、キスは体感5分以上続いた。
「はぁ〜♡幸せ♡♡」
「バカ……。」
「あれ?みんなは??」
「帰っただろ。人のディープキス見て何が楽しいんだよ。恥ずかしいだけだろうが。」
「それもそうですね。じゃあ俺たちも戻りましょっか。もうあいつも寝てるだろうし。」
深夜1時を少し過ぎた。
もうここ以外は暗くて静かだ。
さすがにみんな寝てると思う。
「汗かいた?」
「全然。」
「お前スポーツ選手になれんじゃね?」
「それは舐め過ぎですよ。そんなの到底無理です。」
「俺は変な汗かいた。」
「お風呂もう一回入る?」
「ん〜、入る。」
もう時間が時間だから貸切風呂は開いてなくて、大浴場に入る。
去年みたいに誰か来たらやばいから、少しだけ湯船に浸かって、さっさと体をお湯で流して上がった。
時間も時間だから、そのまま脱衣所に備え付けられた洗面所で歯磨きし、そっと部屋に戻った。
俺は端の布団に入り、夏月は隣に敷かれた布団に入る。
蛇目も蛙石も寝ているようだ。
「おやすみ、綾人さん。」
「おやすみ。」
ひそひそ声で伝え、布団で隠しながら唇を重ねた。
疲れていたのか、俺は気付かぬうちにぐっすりと眠りについてしまった。
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