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第1035話
会食場を後にして、元々割り振られていた方の部屋に戻る。
部屋にはまだ蛇目と蛙石がいた。
「主任、おはようございます。」
「あー、おはよ。」
「城崎くんも。昨夜は眠れましたか?」
「チッ…。おかげさまで。」
やっぱり夏月が寝てないのは蛇目のせいだったのか…。
夏月が怒るってことは、俺になんかしたってこと…?
そう考えるとひやっとして、思わず夏月の腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「俺、蛇目になんかされたのか…?」
「させませんよ。安心して。」
夏月は俺の手に手を重ねて、目を合わせてそう言ってくれた。
よかった…。
また寝てる時に何かされるのは怖い。
夏月を裏切るような行為なら尚更……。
蛇目の家のベッドで目が覚めたあの日のことを思い出してしまい、震えそうになる体を制して何もないように振る舞う。
「出ないのか?」
「主任たちこそ、いつ出発されるんですか?まだ浴衣みたいですけど。」
「あー…。まだ食べ終えたところだし、もう少しお腹休ませてから出るよ。」
「お待ちしててもいいですか?」
「いや…、その……」
蛇目が近づいてきて足が竦む。
あ…、やばい。
声が少し震える。
夏月の腕を掴む手に無意識に力が籠る。
すると、夏月は俺を隠すように前に立った。
「今から着替えるので出ていってもらえますか?」
「私たちの部屋でもあるのでゆっくりする権利はあると思いますけど。」
「じゃあ俺たち別の部屋で着替えてくるので。今日も俺は先輩と二人で回るから、サヨナラ。」
夏月は俺と自分の荷物を取って、俺の腕を引いて部屋を出た。
少しだけ震えが治まり、夏月を見上げる。
「ありがとう。」
「顔が青くなってたからびっくりしました。大丈夫ですか?」
「あぁ…。ちょっと前のこと思い出しちゃって…。」
「…………部屋で話聞きます。行こ。」
涼真たちの部屋に行くと、もう出発したのか、中はもぬけのからだった。
部屋の鍵を閉め、夏月は俺のことを優しく抱きしめる。
「大丈夫です。俺がいますから。」
「うん…。」
「俺は綾人さんが何したって、悲しくなったり傷つくことはあったとしても、嫌うことは絶対ないです。」
「うん…。ごめん…。」
「前みたいな過ちは二度と繰り返さないから。綾人さんを一人になんかしないから。だから安心して?」
優しい声で、俺を安心させてくれようとしてる。
夏月の腕の中は安心する。
ぎゅっと抱きしめ返すと、夏月の頬が桃色に染まる。
「守ってくれてありがとう。」
「どういたしまして。……つーか、あいつ!!本当にキモい!!綾人さんに指一本触れさせる気ないっつーの!!」
「へへ…。夏月、キスして?」
「〜〜〜!!もちろんです!!!」
お互いを味わうような濃厚なキスに、頭がクラクラしそうなほど夢中になっていた。
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