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第1040話

夏月の気遣いもあり、翌日は体調も崩さずに仕事ができた。 俺と夏月は社員旅行を経て、より一層愛情を深めている気がする。 昼休みも、午後のちょっとした息抜き休憩も、もちろん行き帰りもずっと一緒。 バレないようにしないといけないのに、この状況に慣れつつある自分がヤバい。 「綾人さん、あーん♡」 「ん…、美味い。夏月もいる?」 「いる♡あーん♡」 「おまえらさぁ……」 「っ?!!?!」 二人きりだと思っていた休憩室で、お菓子の食べさせ合いっこをしていたら、呆れた顔の涼真がこっちを見ていた。 夏月は舌打ちしていて、涼真の存在に気づいていた様子。 「もう職場にバレていい感じなのか?」 「いや…、そこまではまだ…」 「はぁ…。だったらちゃんと警戒しろよ。昨日だって、ちゅんちゅんが人気(ひとけ)の無い廊下でお前らがキスしてたの見たってはしゃいでたんだからな。鎮めんの大変だったんだぞ。」 「見られてたのか、アレ…。」 「おいこら、後ろの黙ってる確信犯。何考えてんだよ。」 バッと後ろを振り返ると、白々しい表情の夏月。 昨日のキスは俺からだ…。 我慢できなくなって、一応周りに誰もいないのを確認してから、本当にほんの一瞬だけ夏月にキスした。 「いいじゃないですか。二人とも知ってるんだし。」 「だから俺たちじゃなかったらどうしてたんだって聞いてんだよ。」 「涼真っ…、違うんだ。昨日のは俺から……」 「ちゃんと人見て決めてますから。安心してください。」 「おまえなぁ…。綾人のこと守るって言っただろ!」 「守りますよ。当たり前じゃないですか。」 「ふ、二人とも落ち着いて…!」 一触即発な雰囲気におろおろしながら、夏月の手を握ると、夏月はビリビリとしたオーラを消して俺に擦り寄ってきた。 可愛い……じゃなくて! たしかに俺たちこのままじゃ会社にバレるのも時間の問題だ。 このゆるゆるな雰囲気、どうにかしないと…。 「城崎……」 「ん?何ですか?♡」 「俺たち、職場では接触禁止にしよう…!」 「は……?」 「昼休みとか行き帰りとか…、とにかく家に着くまでは我慢しよう!そうじゃないとなんかダメな気がする!!」 「いや、綾人さん?ちょっと待って??」 「名前呼びは職場で禁止って言っただろ!あ、もう休憩終わりだ。じゃあな!また家で!」 「ちょっと?!!」 夏月と涼真を休憩室に残して、俺はデスクに戻った。 何で気づかなかったんだろう? 話すから、触れるからこの甘ったるい雰囲気が漏れ出るんだ。 だったら接触を絶てばいい。 俺って天才! 「あっ!望月さん!」 「ちゅんちゅん、どうした?」 「昨日廊下で…、はぶっ!?」 周りに人がいるのにデカい声で話そうとするちゅんちゅんの口を両手で塞ぐ。 失念していた。 俺たちが気をつけていても、知ってるこいつらを封じなきゃ意味がないことに。 「な、なんすか!」 「しーっ!変なもん見せたのは悪かった。けどそれは忘れてくれ!」 「そんな無茶な…」 「頼む!!」 明日の昼ごはんを奢るからとお願いすると、ちゅんちゅんは二つ返事で了承した。

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