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第1041話
仕事が終わって帰ろうとすると、夏月はまだデスクに座っていた。
いや、多分あいつは仕事終わってる。
俺のこと待ってるんだ。
本当は一緒に帰りたいけど……。
「ごめん。夏月……」
夏月にバレないように、こっそりと会社を後にする。
よく考えたら、6歳も離れた職場の上司と部下が毎日行き帰り一緒にしてるなんて、付き合ってます!って言ってるのとほぼ同義じゃん。
浮かれすぎてこんなことにも気づかないなんて…。
危ねぇ危ねぇ。
一足先に家に着くと、10分ほどして夏月が帰ってきた。
玄関まで迎えに行って、夏月を抱き寄せてチュッとキスをする。
「夏月、おかえり。」
「綾人さんっ!昼のこと本気ですか…っ?!」
走って帰ってきたのか、息を切らしている夏月。
む…。
キスしたのに不機嫌…。
「こっそり帰ってきたのは悪かったよ。でもやっぱりこの方がいいと思う。」
「やだ。俺は綾人さんと接触を断つなんて無理です!」
「でもこのままじゃ職場にバレるじゃん。」
「バレないようにすればいいじゃないですか!」
「無理!!」
「なんで??」
なんでって、そりゃ……。
「俺が…、夏月のこと好きすぎるから……。」
「へ…っ?!」
「バレちゃうだろ?俺、隠すのとか苦手だし…。」
「ちょ、待って待って。可愛いが渋滞してる!」
夏月は顔を赤くしてあたふたし始めた。
俺もつられて赤くなる。
ほらもう…。隠せるわけないんだって…。
「夏月、分かってよ…。ちゃんとみんなに伝えるって気持ちの整理がつくまではバレたくないんだ…。」
「うっ…。でもせめて昼休みか行き帰りは一緒がいいです…。」
「試しに我慢してみよう?でもきっと俺も耐えられなくなると思うから、その時二人で考えよう。な?」
「えー…。いつまでですか…?」
「まずは一週間…とか?」
「…………」
すげー嫌そう…。
でもやってみなきゃ分かんないし、家では目一杯イチャつけばいいし…。
そうだよ、帰ればぎゅってできるんだから。
「分かりました…。でも俺、毎晩抱くよ?」
「え…。」
「それが条件。そうじゃないと俺、綾人さん不足で死ぬ。」
「わ、分かった…。」
今日は金曜日。
明日が社員旅行で遅れをとった分の休日出勤。
来週は祝日があるから、えっと…。
「休みの日は…?」
「一日中抱き潰します。」
「ですよね…。」
悪魔の契約を交わし、俺は今日から一週間、毎晩夏月に抱かれることが決定した。
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