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第1042話

翌朝、俺が先に出社することになったはいいが、夏月のいってきますのキスが長すぎて酸欠になった。 心配だから一緒に行くと言い張る夏月を断り、先に一人で出社、10分後に夏月が一本遅らせた電車で出社してきた。 仕事での最低限の関わりはするものの、他の同僚と同じくらいしか話さないように心掛ける。 昼休みは約束通り、ちゅんちゅんと一緒に食堂へ向かった。 「望月さん!なんすかアレ!!城崎さんめちゃくちゃ怖いんすけど!!」 「あー……。」 「ていうか、朝からなんか二人ともよそよそしくないっすか?!前は廊下でキ…、むぐっ!!」 バカかこいつ。 黙る約束で飯奢ってんのに。 「バカ!」 「すみませんでした。」 「頼むから本当に言わないでくれよ…?」 「で?で?何で距離置いてんすか??」 本当に反省してるのか? 俺と夏月のことに興味津々なちゅんちゅんに、ふぅ…とため息をつく。 「周りにバレそうだから…。一回距離置いてみようって提案したんだよ。」 「時すでに遅しって言葉の意味がようやく理解できた気がします…。」 「ん?」 「いやっ、何も!……というか、城崎さんが怖いんですってば!」 「そうか?俺と話さない以外いつも通りだろ?」 「望月さんにはそうかもしんないっすけど、周りが迷惑被るっていうか…」 「え?」 「いやっ、そのっ、仲良くしてほしいなー?って…。」 「喧嘩したわけじゃないし、家ではいつも通りだから心配すんな。」 ちゅんちゅんは優しいな。 俺たちの仲を心配してくれるなんて。 まぁ夏にあんなことがあったしな…。 「悪いな、心配かけて。」 「えーっと……、もういいっす…。」 「……?」 なぜか大きなため息を吐くちゅんちゅん。 悩み事でもあんのかな? 聞いてみたけど流されてしまった。 部署に戻ると、夏月と目が合う。 あー……、好き。すげー好き。 早く家帰りたいな…。 スマホの通知が鳴って、画面を見ると夏月から『愛してます。』ってメッセージが入ってて、思わず口角が上がる。 「おい、綾人。」 「ん?涼真、どうした?」 「どうしたじゃねーよ。あいつ怖いんだけど。まさか喧嘩した?」 「してないけど。」 「じゃあなんなんだよ?」 涼真もちゅんちゅんと同じようなことを聞いてくる。 夏月そんなに怖いかな? さっきも目合った時笑ってくれたけどな…。 「涼真が言ってくれて気づいたんだよ。このままじゃヤバいなーって。だからバレないように距離置いてる。」 「はぁ…、なるほど。おまえなぁ、極端なんだよ。別に話したり、昼休み一緒にいるくらい大丈夫だって。イチャイチャすんのがダメっつってんの。むしろ急に距離あけたら周りに心配されるだろうが。」 「でも俺、夏月のそばに居たら触っちゃうし…。」 「重症じゃねぇか……。」 涼真もそれ以上は何も言ってこなかった。 いつもより少し長く感じたけど、仕事を終えた。 行きも帰りも俺が先に出発することになったから、帰る前に夏月のデスクに立ち寄る。 「夏月、後でな。」 「はいっ♡」 耳元でそう伝え、俺は先に職場を後にした。

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