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第1044話
「で?どうして東京にいるわけ?」
夏月が問うと、大翔はぷいっとそっぽ向いた。
あれれ…?
まだ完全には心許してない感じか…?
「大翔、来る時は連絡してって言ったよな?今日は何しにきたんだ?」
「大学の見学に来たんです…。でも一週間間違えてて…。」
「え?」
「だからお願い!兄さん、一週間だけ泊めてください!!」
大翔は涙目に俺に抱きついた。
か、可愛い……。
一週間も先なら一旦帰れよ。
普通の人ならそう思うだろう。
俺も相手が大翔じゃなかったらそう思う。
だけどこんなの…。
「いいよ。」
「は??」
「本当ですか?!」
「いや待て待て待て。全然"だけ"じゃないから。一週間"も"だから。帰れ。俺と綾人さんの愛の巣に踏み入れるな!」
「夏月…、そんな大人気 ないこと言うなよ。大翔はまだ高校生だぞ?東京まで来る交通費だって結構かかるし…。」
「じゃあ俺が交通費出すんで。明日には帰ってもらいましょう。」
「いや、それは俺が出すけどさ…」
ちらりと大翔の方を見ると、懇願するように潤んだ瞳でじっと見つめられた。
こんな可愛い弟を追い出せって言うのか?
それに、大翔が突然出ていくなんてきっと理由があるに決まってるのに…。
大翔に断りを入れて、夏月の腕を引いて部屋に入りドアを閉める。
「夏月…、頼むよ……。大翔、多分悩みがあると思うんだ。ちゃんと聞いてやりたい…。」
「うっ…。綾人さんは俺より大翔くんの方が大事なんですか…?」
「そんな激重彼女みたいなこと言うなよ…。二人とも俺の命より大切だよ。」
夏月は長いため息をついて、俺を抱きしめる。
「はぁ…。分かりました。」
「えっ!いいのか…?」
「嫌ですけど。あと条件付きですけど。」
「うん!何でもする!!」
「言いましたからね?」
「うん!夏月優しいっ!大好きっ!」
チュッとキスをすると、夏月は少しだけ笑顔になった。
可愛い…。
数回キスをしてから、部屋を出て大翔の元へ戻った。
「大翔、一週間だぞ?一週間後に帰るって約束できる?」
「はいっ!できます!」
「うん。じゃあ泊まってもいいよ。」
「やったー!兄さん、ありがとうございます!!」
「俺には礼ねぇのかよ…。」
夏月は舌打ちしながらも、大翔をリビングに案内した。
夏月は早速キッチンに立ち、夕食の支度を始める。
大翔はソファに座って、落ち着かない様子でソワソワしていた。
「大翔、狭いけど部屋の説明するからおいで。」
「はいっ!」
俺にぴったりとくっついてくる大翔。
弟っていつまで経っても可愛いもんなのかな?
それとも大翔が特別可愛いんだろうか?
夏月にもこの可愛さ共感してほしいんだけどなー。
大翔を連れて玄関に向かった。
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