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第1045話

「じゃあまずこれ。鍵渡しとく。」 「兄さんの鍵は?おうち帰って来れなくなりませんか?」 「俺は夏月と職場も一緒だから、一週間くらいなんとかなるよ。」 大翔に自分用の家の鍵を渡す。 今は夏月と一緒に出退勤しないって決め事中だけど、帰る前に夏月の鍵借りれば何とかなるだろ。 次に洗面所と風呂場に連れていく。 「着替えは……、ないよな。俺の部屋着がここに入ってるから好きに使っていいよ。タオルはここ。下着と歯ブラシは新しいの出しといてやるからそれ使いな。」 「ありがとうございます!」 「洗濯は適当に放り込んでおいて。大翔が帰る時に、着てきた服を着て帰れるようにはしておくよ。」 「はい!」 「あとはこっちが寝室。勉強とかは俺の部屋使ってくれればいいから。で、俺の部屋の隣は夏月の部屋だけど、そこは入らないようにな。」 「はーい。」 「他に気になることある?」 「大丈夫!」 リビングに戻ると、ジュージューといい音が聞こえる。 んー、美味しそうな匂い。 「牡蠣?」 「そうですよ。」 「やった♪好き!」 「あとカボチャとナッツのサラダ、ニラとネギの納豆炒飯。」 「おう……?」 これはこれは…。 もしかして今日ヤル気満々だったんだって伝えられてる系…? 「気づきました?」 「えっ…、と……」 「もう買ったあとだったから使いましたけど。今日はあそこが熱くなって寝られないかもね。」 「…っ、夏月…。んっ」 リビングからは死角になるキッチンの隅の方で、抱き寄せられて唇が重なる。 舌、熱い…。 舌を絡めると、俺を抱き寄せる夏月の手に力がこもる。 「んっ、夏月…、そろそろ…」 「あいつがいなかったら、ずっとこうしていられるのにね。」 「……………」 「さ。ご飯食べましょうか。」 大翔を一週間も泊めてやると言ったのは、もしかしてよくない選択肢だったのかもしれない。 俺の方が耐えられるか不安になってきた。 「へぇ。やるじゃん。」 「は?素直に美味しそうって言えよ。」 「………まぁ、美味しそうといえば美味しそうかな。」 「ふふ。食べよっか。」 「いただきます。」 夏月に対しては本当に素直じゃないな。 でも箸は進んでるから美味しいんだろう。 「夏月、美味いよ。」 「ほんと?よかった。」 「な、大翔。お兄ちゃん毎日こんな美味い料理食ってんだぞ。羨ましいだろ?」 「……美味しいけど。別に羨ましくなんかない。」 大翔はそう言いつつも、用意された分を綺麗に平らげた。 夏月も完食された皿を見て、呆れたように、でもなんだか嬉しそうに笑っていた。 「大翔、お風呂入っておいで。」 「兄さんは?一緒に入りませんか?」 「あー…、俺は後で入るよ。大翔ももう今年高校卒業するんだから、風呂くらい1人で入らないと。」 「………はぁい。」 大翔が渋々リビングを出ていき、浴室のドアが閉まった音がした瞬間、夏月に抱きしめられて唇が重なった。

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