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第1048話

しばらくして夏月が寝室に入ってきた。 俺の腕にしがみつきながら眠る大翔の姿を見て、少し口を尖らせる。 「なんでそいつが綾人さんの隣にいんの。」 「まぁまぁ。今日くらいは許してあげて?」 「まぁ、いいですけど。そっち寄せて。俺は絶対綾人さんの隣がいい。」 大翔が起きないように少し体をずらし、俺が真ん中で、大翔と反対側に夏月が入る。 抱きしめられて、ゆっくり深呼吸すると、鼻腔が夏月の匂いでいっぱいになる。 すげー幸せ…。 「大翔のこと助けてくれてありがとな。」 「まぁ、ウザいけど綾人さんの弟だし。」 「嬉しかったと思うよ。」 「何がですか?」 「夏月と会えた時。慣れない土地で絡まれてるところを助けてくれたんだ。ほっとしたと思うし、知ってる人だったから尚更。」 「そうですか?帰ってからもすげー攻撃的でしたけど。」 「素直じゃないからな。」 「度が過ぎます。」 夏月は呆れたようにため息をついた。 まぁ本当、捻くれすぎだもんな。 兄ながらにそう思う。 「明日は二人でデートしよ?大翔くんは勉強でしょ?」 夏月の頭を撫でていると、甘えたように擦り寄ってきておねだりされる。 可愛い顔と格好いい顔の使い分けがプロだ。 「いいよ。どこ行きたい?」 「二人きりならどこでもいい。帰りは絶対ホテル寄りたい。」 「はは。ド直球だな。」 「だって綾人さんとセックスしたいもん。」 夏月は俺の唇を優しく食んで確かめたあと、にゅるりと舌を入れる。 声、漏れないようにしないと…。 「ん…、んん…♡」 「は〜……、かわいい。明日いっぱいシようね。」 「うん…。楽しみだな、明日。」 ちゅっちゅと何度もキスしてから、夏月の胸に擦り寄って目を閉じる。 思い返せば怒涛の一週間だったな…。 社員旅行に行って、お触り禁止して、やっと休みかと思えば大翔が来て…。 すげー疲れたけど、また夏月と新しい思い出ができて嬉しかった。 こうして大翔と三人で寝てるのも、いつか思い出して、そんなこともあったなって楽しい思い出になるのかな。 「綾人さん、寝た?」 「ううん、起きてるよ。」 「色々ありましたけど、今週も楽しかったですね。」 「俺も同じこと考えてた。」 視線を上げると、優しい顔をした夏月と目が合う。 キスしたいなって思うと、夏月も同じこと思ってるのか自然と顔が近づいて、優しく唇が重なる。 「次は二人で旅行行こうな。」 「はい。どこ行きたいか考えててくださいね。俺も考えておきます。」 「また温泉って言ったら怒る?」 「ううん。俺も温泉好きですよ。いろんなところ巡りましょう。」 旅行行くたびに温泉ばかりで、こんなジジくさいプランに付き合わせていいものかと悩むけど、夏月はいつも楽しそうに付き合ってくれるから、いいのかなと甘えてしまう。 夏月と付き合うまで相手は異性だったから、温泉に行っても結局男女で別れることになるし、旅行自体そんなに行ってなかった気がする。 結局夏月と温泉行っても貸切風呂なんだけどな。 「悪い。眠くなってきた…。」 「明日に備えて寝ましょう。」 「うん…。おやすみ、夏月。」 「おやすみなさい。」 最後にもう一度だけキスして、俺は夢の中へ(いざな)われた。

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