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第1049話

翌朝、寝苦しくて目を覚ました。 「兄さん〜……、むにゃ……。」 「綾人さんは俺のだっつの……。」 「……………。」 左右から引っ張られていた。 通りで寝苦しいわけだ。 「二人とも起きろ〜。引っ張るな〜。」 「「………っ!!!」」 起きるの同時…(笑) 二人ともほんとは絶対気が合うだろ。 「兄さんっ!おはようございます!」 「綾人さん、おはよう。今日のデート楽しみですね♡」 「はぁっ?!そんなの行かせないし!!」 「約束してるんだよ、バーカ。受験生は大人しく勉強してな〜?」 「くっ……!!やだ!兄さん行かないで!僕の勉強見てください!!」 「綾人さん!!約束は守ってくれますよね?!」 「えーと……」 二人に懇願するように見つめられて固まる。 もちろんデートに行くつもりなんだけど、大翔をどう説得するか…。 「とりあえず飯食うか。」 「兄さん!はぐらかさないでくださいっ!」 逃げるように寝室を出ると、大翔が追いかけてくる。 夏月は余裕の笑みで起き上がり、俺たちの後をついてきた。 「綾人さーん♡どこ行く?」 「だからそんなの聞いてないってば!兄さん、行かないよね?!あんな奴より僕の勉強の方が大事ですよね!?」 「あー……。」 なんで話逸らしたのに戻すんだよ、夏月のバカ…。 大翔は完全に駄々っ子モードになってしまってるし…。 「じゃあ午前中だけ勉強見てやるから、午後は夏月と出掛けていい?」 「はいっ!」 「ちょっと?!綾人さん!!」 「仕方ないだろ…。夏月も勉強一緒に見てあげて?」 「そんな……」 デートしたかったけど、二人きりになれる場所ってなかなか思いつかないし、だからといって朝からホテルは俺の体が持たない。 午前はゆっくり座りながら勉強教えて、午後はホテルで夏月とイチャイチャ…。 これが二人とも納得して、俺の体にも負担がかからないベストアンサーだと踏んだ。 ショックで固まっている夏月に近づいて、耳元に顔を寄せる。 「昼からホテル行こ…?俺、夏月のために頑張るから…。」 「……!何を頑張ってくれるんですかっ?!」 「色々……。」 「仕方ないなぁ♡勉強くらい見てあげますよ♡」 ご機嫌になって俺の頬にキスする夏月を見て、大翔はゲェッと露骨に嫌な顔をする。 もうヤダ……。 「はい。もうほら。飯食おう。お腹すいたから。」 「はーい♡」 「兄さん、僕の隣ね!」 午前は大翔に時間をあげてもいいと思ってくれたのか、夏月は大翔の多少のわがままには口を出さずにいてくれた。 夏月にも勉強を見てほしいと言ったのはどうやら正解だったようで、優秀な大翔がわからないところはなかなかの難問ばかりだった。 基本的にリビングで俺と夏月がのんびりしていて、問題に詰まった大翔が解らない箇所を質問しにくる形を取った。 夏月は分かりやすく教えてあげているし、大翔もさっきまで噛み付いていたのが嘘かのように、夏月の一語一句聞き漏らさないように集中している。 普段もこれくらい仲良くしてくれるといいんだけど…。 12時に昼ごはんを食べて、俺と夏月は外出の準備を始めた。 「じゃあ夕食までには帰ってくるから。飯はなんか外で買ってくるから、もしお腹すいたら適当に食べててくれるか?」 「はい!分かりました!」 「夏月、行こっか。」 「はいっ♡♡」 「城崎さん。その……、勉強教えてくれてありがとうございました……。」 「おー。どういたしまして。」 夏月は今からデートするから元々機嫌は良かったが、捻くれ者の大翔が礼を言ったことにより一層嬉しそうな様子だった。

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