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第1050話
夏月と手を繋いで歩く。
あと二週間ほどで12月、どうりで寒いわけだ。
ぶるるっと身震いすると、夏月は繋いだ手をコートのポケットに入れた。
「こーいうの、なんか恋人っぽいですよね。」
「……恋人だし。」
「たしかに。俺と綾人さん相思相愛でした〜♡」
本当機嫌いいな。
ルンルンの夏月可愛いすぎんだけど。
これ以上可愛いのは反則だ。
「どんなホテルにする?またSM行く?」
「あれはもう勘弁してくれ…。普通のとこでいい。」
「気分上がるとこがいいですよね〜。プール付きとか?」
「普通のとこでいいってば。」
夏月は楽しそうにスマホで検索している。
どうせ行ってもやること一緒なんだから、ある程度清潔で派手過ぎない所ならどこでもいいんだけどな…。
楽しそうだからいっか。
「ここにしよ。行きましょう、綾人さん!」
「ん。」
職場と反対方向の3駅ほど離れたホテル。
写真を見る感じ、普通のところを選んでくれたらしい。
駅に向かう途中、夏月のスマホに着信がきた。
「ちょっとごめん。出ますね。」
「おー。」
デート中は結構電話無視したりするんだけど、出るってことは職場、もしくは倉科さんあたりか。
職場なら電話に出る前に俺に言いそうだから、おそらく後者。
「はぁ?!無理!!」
突然大きな声を出すから、俺はビクッと体が跳ねた。
周りの視線も集まり、夏月は口を手で押さえて少し声のボリュームを落とす。
「どうした?」
「ちょ、無理ですよ!?今日は本当に無理!………おい!自己中すぎるって!」
「夏月…?」
「あ、綾人さん…っ!ちょっと待ってね?」
「うん…?」
何か急ぎの用事を頼まれてるのか…?
倉科さん相手だとしたら、なんだかタメ口すぎるような…。
じゃあ相手誰?
少しモヤっとして夏月の手のひらを抓ると、親指で優しく撫で返された。
「絶対行きませんから!……あーもう。本当になんなんですか?!俺今から綾人さんとホテルなんです!セックスするの!!」
「?!」
こいつマジで誰に電話してんの?!
俺たちのこと知ってる人…、やっぱり倉科さんか??
てか、そんなことまで言わなくていいじゃん!
「ちょ、切るなって!………あーもう!!」
「ぉわっ?!」
スマホを投げようとする夏月の手を掴む。
この機嫌の悪さ、もしかして……。
「綾人さん、ごめん…。透さんが今から来いって……。」
やっぱり。
いつものように振り回されているらしい。
「なんかそんな気がした。」
「あー無理…。綾人さんとセックスできると思って午前中大翔くんに譲ってあげたのに…。無理…。本当に死ぬ…。」
「夏月、一応外だからあんまり…、その……」
「綾人さんとセックスしたい。」
「夏月……」
「もういっそのこと、その辺にあるホテルで一発ヤリませんか?優しくするから。」
イケメンがセックスセックス連呼するな。
あんまり人歩いてなくてよかった…。
通りすがった人にすげぇ目で見られてたけど。
「倉科さんは何時に来てって?」
「13時。」
「今じゃん。」
「無理。本当に無理。別に遅れてもよくないですか?あっちが勝手に言い出したんだから、いつまでも待たせとけばいいんですよ。」
「でもいろいろ恩もあるんだろ?これからもお世話になることあるだろうし…。」
「あ〜………。やだああああああ。」
目尻に涙を浮かべている夏月をあやしながら、倉科さんとの待ち合わせ場所に向かった。
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