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第1063話
夜は三人でベッドに入り、朝には夏月の体調も軽快していた。
先に家を出る準備をしていると、部屋に夏月が入ってきて、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
「綾人さん、もう行くの?」
「うん。」
「ちなみになんですけど、今日で一週間ですよ。」
「何が?」
「会社で一緒にいるのやめよって言ってから。まずは一週間って言ってたでしょ?もう俺やだ。行き帰りも昼休みも綾人さんと一緒がいい…。」
もう一週間経ったのか。
こういうことはちゃんと覚えてるんだよな、夏月。
「一緒に行こっか。」
「はいっ!」
「もう出れる?」
「いつでも行けます!」
夏月は満面の笑みで返事した。
久々に夏月と一緒に出社する。
特に夏月なんて昨日休んでるから、周りに気にされるんじゃないかと不安になったけど、特に何も声もかけられないまま部署に到着した。
「ね?大丈夫でしょ?これからも行き帰り一緒にしましょ?昼は時々柳津さんとかも一緒にいれば疑われないと思うし。ね?ね?」
「んー…。」
俺だって夏月と一緒にいたい。
あまり何も言われないなら、週何度かくらいは行き帰り一緒でも疑われないかな…?
今まで一緒に来て帰ってたし、やっぱり俺の気にしすぎ?
でもでも、夏月と一緒にいたら俺またデレデレになっちゃうんじゃ…?
「いいんじゃねーの?」
「涼真…」
「社員旅行の後はなんかお前らイチャつきすぎてやばかったけど、元々はそうでもなかったろ。城崎はあれが通常運転だし、綾人さえ気をつければ大丈夫だと思うけど。」
「本当?」
「あぁ。むしろ城崎を綾人から引き離すことで周りに弊害出てるし…。デメリットの方がデケェ…。」
「??」
「柳津さん、ナイスアシストです♪」
なんか丸め込まれた気がしなくもないが、こうして俺と夏月は今まで通り会社でも一緒にいることになった。
嬉しい。
俺だって、実は結構寂しかったんだからな。
「あー!城崎さん、おはようございます!風邪平気っすか?」
「あぁ、治ったよ。」
「よかったっすね!ちなみにどっちからっすか?やっぱり城崎さんから?」
「何が?」
「何って、風邪なんか引いてる時にチュ…、ふがッ!」
また大きい声で余計なことを言おうとするアホ鳥の口を手で塞いだ。
自分達の行動のせいでバレるならまだしも、こいつのせいで会社にバレるのだけは絶対嫌!!!
「ふがが…!もちづきさ…っ、離して…!」
「黙るか?」
苦しそうに俺をバンバン叩くちゅんちゅんに問いただすと、必死に首を縦に振っていた。
解放するとすぐに俺から距離を取り、涼真の後ろに隠れる。
「望月さんに殺される…!」
「いや、今のはお前が悪いよ、ちゅんちゅん。」
「そんなぁ…。」
「口にチャック縫い付けてやろうか?」
「痛いです〜……。」
泣き真似をするちゅんちゅんをデコピンして、今日も仕事がスタートした。
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