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第1064話
定時を過ぎ、みんなが続々と帰って行く中、夏月はまだパソコンと睨めっこしていた。
夏月の後ろに椅子を持ってきて、座って手元を覗く。
「まだ時間かかりそう?」
「はい…。残業付き合ってくれます?」
「いいよ。大翔には連絡入れとく。」
昨日の残りと、足りなければ冷凍かレトルトを食べておくように連絡すると、文句一つ言わず、寧ろ俺の体調を心配するような気遣いの一言も添えられていて、よくできた弟だと感心する。
これで心置きなく残業できる。
夏月の手元から手伝えそうな分をもらって、隣のデスクで作業を始めた。
刻一刻と時間は過ぎ、19時を過ぎる。
「もう私も帰るぞ。城崎、病み上がりなんだから無理しないようにな。」
「はい。お気遣いありがとうございます。お疲れ様でした。」
「望月も自分の分が終わったなら、そろそろ帰りなさい。週明けで間に合うのもあるだろう?」
「すみません。そろそろ帰ります。お疲れ様でした。」
部長も帰って行き、部署には俺と夏月二人きりになる。
静かな部屋にキーボードをタイプする音だけが響く。
話しかけようと思ったけど、夏月があまりにも集中した目をしているから、なんだか声をかけにくかった。
20時を回り、夏月の手が止まる。
「ふぅ。」
「終わった?」
「うん。」
夏月は俺の肩にこてんと頭を乗せる。
甘えてる。かわいい。
「帰ろうか。」
「嫌だ。」
「え?……んっ、ちょっと…」
突然唇を奪われる。
二人きりだけど、ここは会社だ。
いつ誰が来るかもわからないのに。
「夏…っ、夏月…、駄目…!」
「城崎。」
「え?」
「会社では下の名前禁止なんでしょ?先輩が言ったんじゃん。」
夏月は悪いことを考えてそうな貼り付けたような笑顔で俺に微笑んだ。
これ…、なんか嫌な予感…。
「ひぁっ!ちょ…っ、何してんだよ?!」
「何って、言わなきゃ分かんない?」
夏月は俺をデスクに追い詰め、俺が身動きを取れなくなったのをいいことに、腰を抱き寄せて俺のズボンのウエスト部分から中に手を入れた。
直接尻を揉まれて変な声が出る。
「ここがどこか分かってんのか?!」
「会社ですね。」
「分かってんなら今すぐやめ…、〜っ///」
抵抗も虚しくベルトを外され、ズボンが床に落ちた。
拾い上げようとするも、脚の間に膝を入れられ、しゃがむことすら許されない。
会社でこんな格好、恥ずかし過ぎる。
「城崎!いい加減にしろ!」
「休みの日は熱出して、家に帰ったら大翔くん。俺はいつ先輩に触れられるんですか?もう先輩が足りなくて死にそう。」
「だからって職場じゃなくていいだろ?!見回りもくるし、もしバレたら…」
「嘘つき。」
「は…??」
「先輩何でもするって言ったよね。大翔くん家に泊める時。その権限今使います。今からここで俺とえっちして。」
夏月は俺の目をまっすぐ見て言った。
どうやら本気らしい。
本気でここでセックスする気だ。
「そんなの…っ!」
「約束守れないの?てか、本来なら毎日抱く予定だったのに、結局全然シてないし。」
「違…っ!もっとこう…、他に色々あるだろ?!」
「ない。大丈夫、バレないようにするから。」
夏月はもう一度俺の唇を奪い、離す前にぺろりと唇を舐めた。
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