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7話
にわかには信じがたい話だが、今の状況を考えると信じざるおえない。
手や足に絡まる大きく強力な蜘蛛の糸。
そして頬を切った糸。
蜘蛛は好きだが、こんな糸は知らない。こんな巨大なクモがいるなんて辞典にもネットにも載っているわけがない。記憶に残る巨大な蜘蛛が頭をよぎった。しかし、気配はそんなに大きなものでは無い。気配から狼か、熊か動物くらいの大きさを想像させた。
「俺の獲物だ!」
背中の方から声がして振り返ると、一人の男が鋭い爪を光らせ飛びかかってきた。
それは蜘蛛ではなく人の形をしている。緑の衣を羽織りをなびかせ、その装飾は輝き美しさを感じた。
「誰が渡すか!」
声と共に黒と黄色の衣が飛び掛かって来た。緑の衣に糸をかけ、引き寄せ蹴り飛ばす。
「あれは私の獲物だ!」
「俺のものだ!」
「邪魔をするな!お前みたいな雑魚虫が勝てるわけない」
悪態と怒号、そして蜘蛛の糸が飛び交いあたりに糸が張り巡らされていく。
「すごい……」
見たこともない光景を見ているはずなのに、恐怖心より好奇心が勝った。こんなに巨大な糸が飛び交うところが見れるとは思わなかった。網もかなり強力な物で木や岩をに傷をつけていく。上空の暗い中からパラパラと葉や枝が降り落ちてくる。
ピシャっと音が聞こえ、背中を押された気がした。振り返ると背中に蜘蛛の糸がついていた。
「来い!」
そう聞こえ背中に着いた糸に引っ張られ、木や地面につながる手足の糸がブチブチと切れた。
「うわっ」
体が軽々と持ち上げられ宙で体が回る。上下が反転したあたりで突然別の糸が飛んできて体を引いていた糸が切られる。空中で急に重力がかかり落下した。
「あぁ、うわあああ!」
蔵之介は叫びながら頭を抱え込んだ、蜘蛛の網が張られ地面スレスレで体はバネのようにはね、止まった。
「もう、なんなんだよ!」
先ほどまで蜘蛛の糸に感動していた蔵之介だが、さすがの出来事に恐怖で目から涙が溢れ出す。ため息を付こうとすると、今度は口元に糸がぐるぐると巻かれた。
「んん!」
「何してるんだ!?」
蜘蛛の白い衣の一人が怒鳴る。
「うるさいから口塞いだだけだろ!」
他の蜘蛛がにやりと笑い答えた。
「生贄には手荒な事はするなって言われてるだろ!」
他からがやがやと声が上がる。
「うるせー!テメーらの口もさっさと塞いでやる!」
何人かの言い争ってる声と木のきしむ音が続く。
ひゅんひゅんと蜘蛛の糸が張り巡らされ、ねちょねちょ付着する音が聞こえる。
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