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8話

 口をあふさがれてしまい声が出せなくなり、呼吸も浅くなる。息苦しくなり、さらには蜘蛛の糸に囚われ体を動かすことも出来なった。恐怖心から体が震えた。このまま自分は死ぬのだろうか?  捨てられたというのに死ぬのはまだ怖い。  ここに先ほど見た、岩をも傷をつける糸が飛んで来たら避けようがない。どうにか抜け出せないかと付着した糸を引っ張り外そうと動くが、動けば動くほど服にへの付着面積が広がっていく。  先ほど手足に絡みついた糸は体を引かれると共に簡単に切れた。なのに蔵之介の力では切れない。それだけ力のある者たちの戦いなのだろう。百年に一度の生贄をかけた戦いだ、自分がどうされるのかは分からないが、戦ってる者たちにとっては多分相当な覚悟をしてきているに違いない。  シュッと音が聞こえ、音のした上空を見ると、枝が落ちてくるのが見えた。思わずきゅっと目を閉じると、顔の横をかすめて落ちていく。 「うぅ・・・怖いよ」  思わず弱音がこぼれた。こんなの話に聞いてない。命が目当てなら誰でもいいからさっさととどめをさして欲しいくらいだと、眼から涙がこぼれた。この後いったいどうなるんだろう?  暗闇で争いが続き、いつまでこの状態が続くのか蔵之介の不安が募った。会話を聞くにその争いの種は蔵之介、やはり生贄をかけてのものの様だ。  ふと、ふさがれていた口の糸が外されてることに蔵之介は気付いた。さっきまで確かにふさがれていたのに。周りを見るが誰がいるわけでもない。もう訳が分からないと蔵之介はため息をついた。 「いいか?俺が生贄を手に入れる!バードイートの名に懸けて!」  声を上げたのは一際からだのでかい男だった。バードイートは鳥をも食べる蜘蛛の事だ。それだけ体は大きく、巣もでかい。蔵之介は頭だけ声の主の方へ向けると、男は木の上から蔵之介を見据えにやりと笑った。  蔵之介は苦笑するとその間に白い衣の蜘蛛が三人立ちはだかった。  はっきり見えはしないが、その蜘蛛の足元にきらりと蜘蛛の糸が光った。 「生贄はお前の物にはならない!それが定めだ」 「今からそれを証明してやる」  三体がそれぞれ別の方向へ散り、バードイートへととびかかった。 一体が網を作りバードイートのからだを捉え、もう一体が鋭く尖らせた細かな糸を途切れることなく飛ばした。  バードイートはそれを見て笑い体にまとわりつく糸をちぎり外した。それと同時にも一体の白い衣の蜘蛛が背中に勢いよく太くとがった糸を突き刺した。  それは剣のような形をしている。 「糸が弱いな」  突然横から声がして見ると白い衣の白い髪の男が立っていた。  頭側に立ち、顔は見えない。 「君は誰の生贄になりたい?」  その男は少しだけ振り返り、問う。  しかしまだ顔は見えない角度だった。

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