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8.5話

「俺は、怖いから早く終わって欲しい」 「分かった」  白い衣の男はそういって、高く飛び上がり、木の中に消えた。 「それで隙をついたつもりか?」  バードイートは脇にわずかながらに傷をおいながらも剣をかわし、白い衣の一人の剣を持つ腕を引き細かな糸に向かい盾にする。 「ひっ」  盾にされた蜘蛛が声を上げ、糸を飛ばしていた蜘蛛は糸を飛ばすのを止めた。しかし既に飛ばしている糸が大量に飛んでいく。 「糸を止めるな!」  別の声がして、木の陰から別の白い衣の蜘蛛が飛び出してきた。  その蜘蛛は先ほど蔵之介の側に立っていた男。髪まで白く輝いて見える。  白い髪をなびかせ、瞬時にバードイートの腕に切りかかる。バードイートは避けようとせず捉えた白い衣の蜘蛛を盾にする。それを見て、体を返しバードイートの肩を足蹴にし、白い衣の蜘蛛を引っ張った。  しかし、そんなことでバードイートの腕から奪えるはずもない。その巨体にある力はただならぬものだ。無理に引けば手足が千切れる。すると白い髪の蜘蛛は自分の指に噛みついた。するとすぐに口を離し人差し指と親指輪を作り、口に添えた。それを見てバードイートは舌打ちをし、捉えていた白い衣の蜘蛛のを手放し、その場から立ち退いた。同時に二人の体も落下した。  そこに細い糸が流れ込み空を切った。  白い髪の蜘蛛は地面に着地すると口から何かを吐き出した。 「すみません」  助けられた蜘蛛が言うと、白い髪の蜘蛛は立ち上がった。 「最善を尽くせ」  それだけ言って軽くほほ笑むとすぐにその場から立ち去った。  それから数分経った。ずっと見ているせいか落ちてくる枝は一切ぶつかってこないと気付く、そんな余裕すら出てきた。枝が落ちてきそうになるとどこからともなく蜘蛛の糸が飛んできて弾き飛ばされる。  それを、目の前で何度も見た。  どうやら、生贄とはいっても守られているようだった。  先ほど聞こえた「手荒なことはするなと言われている」という言葉はきっとそれを意味している。  動き回る音が減っていき、数人になっているのがわかる。蔵之介から左上あたりに戦う2人、それとは別に蔵之介から枝を払ってくれる1人。3人いる事は容易に想像できた。  しかし僕はいつまでこの状態なんだろう?  動けない状態が続き、手足がしびれてきた。

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