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10話
白い髪の男は、振り返り蔵之介の頬に触れ傷ついた頬に素早く糸を張った。
さらに体に糸を瞬時に巻きつけた。
「すまないがここにいてくれ」
と木に繋がれる。
「え、ちょっと!」
高い木の上にぶら下げられ、おきざりにされた蔵之介は白い髪の男を目で追う。
白い髪の男は巨体にとびかかっていき、両手から糸を放つ。同時にバードイートも糸を飛ばし、お互い飛ばした糸がお互い絡まり、蹴りあうと遠心力で体を返し二人は離れていく。その間で絡んだ糸は切れ、飛び散った。
そして二人の姿は再び見えなくなった。
「なっ、なんで、っていうかおろしてよ!」
蔵之介が叫ぶが、返事は返ってこなかった。木につながった糸は細くなんとも頼りない。体は足まで糸でぐるぐるに巻かれミノムシ状態で宙づりにされていた。
足元を見ると、地面が遠くゆがんで見えた。目をぎゅっと強く瞑った。目を閉じていると体が少し揺れる。
目をそっと開くと、体はスーッと下へゆっくり下がっていく。
「え?何?」
上を見ると糸が伸びていくのが見える。
のぞき込むように、頭を動かすが木の中には何も見えなかった。しかし、おろされ地面が近付いてるなら一安心だ。
安心感からまた下をみるが、まだかなりの高さだ。体を震わせ再び目を瞑る。
つるされた糸が切れないことをひたすらに祈った。
地面近くにつくと、地面に着く数センチ上で止められた。
体を動かしてみるが、ぐるぐる巻きにされた体は動かすことができない。蔵之介は諦めたように項垂れる。
しかし、なぜか糸は心地よく気持ちが落ち着いていた。暖かくは無いが、包まれていると安心できる。夜にこの状態になったら眠ってしまいそうだった。でも寝るわけには行かない。しばらくじっとして周りを見ていることにした。
それから10分くらい経っただろうか?もっと経ったようにも感じる。
さっきから、すごく静かだ。両社とも警戒しているのか戦う音が聞こえない。
蔵之介は上に広がる暗闇を見た。
そういえばなんで暗いんだろう?時間はまだ夕方のはずだ。
それも夜の暗さではない。奇妙なくらい空が黒かった。
なのに視界はさえぎられず、周りの様子は見て取れる
「あいつ諦めたか?」
巨体の男が地面に降り、歩み寄ってきた。
踏みしめる足元の木の葉がサクサクとなる。
「どうした!?こないならこの生贄は俺のものだ!」
男は歩きながら周りに叫んだ。
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