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12話
しかし、男はその手を掴み、帯を外し、蔵之介の衣を脱がした。
「ちょっ何して!?」
服を脱がされると全裸だ。慌てて前を隠すが手を再び引かれ姿勢を正される。
「恥ずかしがらなくていい」
男はそういってほほ笑む。しかし、全裸で立つなんて恥ずかしく、蔵之介は顔を赤くした。
「良かったな、君は僕の生贄だ」
そう言われ、手を差し出される。
その手は白く、男の全身は輝いて見えた。不思議と心が引かれ、警戒しながらもその手に右手を重ねた。
それと同時に、白い髪の男の後ろから何かがとびかかってくるのが見えた。
「危ない!」
叫ぶのと同時にとびかかってきた何かはクモの巣にかかり、跳ね返される。さらに糸が絡まり身動きが取れずもがいていた。
跳ね返された体はしばらくもがいた後力尽きたのか、その場に倒れて動かなくなった。
蔵之介は手を引かれ、抱きしめられた。白い髪の男は顔だけ振り返り、あたりを警戒し周りを睨んだ。
蔵之介は抱きしめられながら白い衣の男の顔を盗み見た。輝く髪と衣がまぶしく、勇ましさとその神々しさに胸も高鳴なった。力のある人間はオーラがある。蔵之介は気持ちを抑えようと目をぎゅっと閉じた。
なぜこんなにドキドキしてしまうのだろう。先ほど手を差し出されただけでも心が和らいだ。こんな気持ちになるのは……。
考える蔵之介をよそに、抱きしめる腕の力が一度強まり、ぎゅっと体が締め付けられた。服越しでも男の体躯がしっかりしてるのが分かる。
衣の男は、警戒を解くと表情はおだやかなものとなり、にこやかに笑う。
体を離されると、全裸だといういう事を思いだし、蔵之介は男の上着の裾を掴み恥ずかしそうに前を隠す。
「少し待って」
男はほほ笑んで数歩離れた。
体が離れ、手を体の前で交差させ手を振り上げた。
すると手の先から糸が飛び、手を動かす度に目の前で何層にも糸が重なっていく。男は舞うように体を返し、蔵之介へ向けて手から糸を放った。それは柔らかく、漂い蔵之介の方へ舞い飛んだ。
蔵之介は思わず目を閉じた。体に糸が触れる感触がする、しかしそれは軽い。
「終わった。それでいい」
そう聞こえ、目を開けると見慣れない衣を着ていた。
男の着ている衣と似た白い衣で、着物の様だがそれとも少し違った。
「あの、これは?僕は……一体」
「君は生贄だ。今の戦いは君を勝ち取る為の物。それに僕が勝利し、君を手に入れた。だから君は僕の物だ」
男はそれだけ言うと、蔵之介の腰を抱え持ち上げ軽くキスをした。
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